ありがたや、ありがたや、ありがたまんじゅうでもいただきましょうでぶー。
もう八月も終わり。季節も代わって来て、おいらのようなつくつくぼーしも、いつまでも鳴いて暮らしているわけにもいきません。今日は少しありがたい話でもしましょう。
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むかしむかしのことでございます。
馬鳴大士(めみょうだいし)という方は西天竺の波羅奈国のひとであるが、富那夜奢(プルナ=ヤージャ)尊者から教えを受け継いで、華氏国に至って説法していた。
その説法の場へ、
忽有老人、座前仆地。
忽ち老人有りて、座前にて地に仆る。
突然、ひとりの見知らぬ老人が現れ、大士の座の前でばたりと地面に倒れた。
「たいへんだ、お年寄りがお倒れになった」
と説法の場にいたひとたちは騒いだが、大士は彼らを押しとどめて、
此非庸流、当有異相。
これ庸流にあらず、まさに異相有るべし。
「こいつはただものではござりますまい。すぐに不思議なすがたを現わすであろう」
と
言訖不見。
言い訖るに見えず。
話し終えたと思ったら、もう地面に倒れた老人の姿は見えなくなっていた。
一瞬のち、
俄従地涌出一金色人、復化為女子、右手指祖。
俄かに地より一金色人の涌き出で、また化して女子と為り、右手に祖を指す。
にわかにその地面から一人の黄金色のひとが涌き出てきた―――と見るまにそのひとは女性になり、右手で大士をゆびさした。
「おほほほほ・・・・、おまえは、如来の許しを得ているのかい? おほほほほ・・・・・・・」
と言うと、
暫然不見。
暫然として見えず。
しばらくしてまた姿が見えなくなった。
「なんだなんだ」
とざわめく人々に、大士言う、
将有魔来、与吾較力。
まさに魔の来たりて吾と力を較べんとすなり。
「魔物じゃ。魔物が来て、わしと法力をたたかわせようとしているのじゃ」
とそのとき、
ばーーーーんんん!!!
有頃、風雨暴至、天地晦冥。
有頃、風雨暴至して、天地晦冥たり。
突然、激しい風が吹き、たたきつけるような雨が降り出して、あたりは真っ暗になったのでございます。
「うわーん」
魔之来信矣、吾当除之。
魔の来たるの信なり、吾まさにこれを除くべし。
「うろたえめされるな。魔者がやってきております。大丈夫じゃ、わしが除き去ってみせましょうぞ」
大士は「むむん!」と合掌して祈ると、
「見えた! そこじゃ!」
即指空中。
即ち空中を指さす。
即座に虚空の一点を指さした。
そこには―――――!
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はい、続きは次回のお楽しみー。「五燈会元」巻第一「馬鳴尊者」より。
月曜から四日も世間さまに顔を出していたのでバテてきました。なにしろおいらはセミですから、疲れ方はニンゲンの比ではありませんつくつくつく。明日は週末だから少しは元気になれるかも・・・。