平成29年8月31日(木)  目次へ  前回に戻る

ありがたや、ありがたや、ありがたまんじゅうでもいただきましょうでぶー。

もう八月も終わり。季節も代わって来て、おいらのようなつくつくぼーしも、いつまでも鳴いて暮らしているわけにもいきません。今日は少しありがたい話でもしましょう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

むかしむかしのことでございます。

馬鳴大士(めみょうだいし)という方は西天竺の波羅奈国のひとであるが、富那夜奢(プルナ=ヤージャ)尊者から教えを受け継いで、華氏国に至って説法していた。

その説法の場へ、

忽有老人、座前仆地。

忽ち老人有りて、座前にて地に仆る。

突然、ひとりの見知らぬ老人が現れ、大士の座の前でばたりと地面に倒れた。

「たいへんだ、お年寄りがお倒れになった」

と説法の場にいたひとたちは騒いだが、大士は彼らを押しとどめて、

此非庸流、当有異相。

これ庸流にあらず、まさに異相有るべし。

「こいつはただものではござりますまい。すぐに不思議なすがたを現わすであろう」

言訖不見。

言い訖るに見えず。

話し終えたと思ったら、もう地面に倒れた老人の姿は見えなくなっていた。

一瞬のち、

俄従地涌出一金色人、復化為女子、右手指祖。

俄かに地より一金色人の涌き出で、また化して女子と為り、右手に祖を指す。

にわかにその地面から一人の黄金色のひとが涌き出てきた―――と見るまにそのひとは女性になり、右手で大士をゆびさした。

「おほほほほ・・・・、おまえは、如来の許しを得ているのかい? おほほほほ・・・・・・・」

と言うと、

暫然不見。

暫然として見えず。

しばらくしてまた姿が見えなくなった。

「なんだなんだ」

とざわめく人々に、大士言う、

将有魔来、与吾較力。

まさに魔の来たりて吾と力を較べんとすなり。

「魔物じゃ。魔物が来て、わしと法力をたたかわせようとしているのじゃ」

とそのとき、

ばーーーーんんん!!!

有頃、風雨暴至、天地晦冥。

有頃、風雨暴至して、天地晦冥たり。

突然、激しい風が吹き、たたきつけるような雨が降り出して、あたりは真っ暗になったのでございます。

「うわーん」

魔之来信矣、吾当除之。

魔の来たるの信なり、吾まさにこれを除くべし。

「うろたえめされるな。魔者がやってきております。大丈夫じゃ、わしが除き去ってみせましょうぞ」

大士は「むむん!」と合掌して祈ると、

「見えた! そこじゃ!」

即指空中。

即ち空中を指さす。

即座に虚空の一点を指さした。

そこには―――――!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

はい、続きは次回のお楽しみー。「五燈会元」巻第一「馬鳴尊者」より。

月曜から四日も世間さまに顔を出していたのでバテてきました。なにしろおいらはセミですから、疲れ方はニンゲンの比ではありませんつくつくつく。明日は週末だから少しは元気になれるかも・・・。

 

次へ