昼間から公園で眠るカッパ、モグ、ぶた天使。どこででも眠れる、というのは長所でもあり短所でもあろう。
まだ平日が続いております。職場で居眠りしてしまうこともよくある今日このごろ。
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夏日昼寝夢遊一院、闃然無人。
夏日、昼寝ねて夢に一院に遊ぶに、闃然(げきぜん)として人無し。
ある夏の日に昼寝したところ、夢の中でどこかの家の中庭をふらついていた。しーん、として人の気配はまったくない。
中庭の奥に広間があるので、数段の階段を昇ってそこに入ってみる。
簾影満堂、惟燕蹋箏弦有声。
簾影堂に満ち、ただ燕の箏弦を蹋(ふ)むの声有るのみ。
周囲のすだれの影が広間いっぱいに広がっていた。ふと耳に聞こえる音があって、見回してみると・・・
一つがいのツバメが、琴の弦から弦へと飛びかっていた。彼らの細い足が弦に触れる、そのかそけき音が聞こえていたのだ。
―――この琴は・・・あのひとの・・・?
というところで、
「むにゃむにゃ」
目が覚めました。
覚而聞鉄鐸風響璆然。殆所夢也邪。
覚めて鉄鐸(てつたく)の風に璆然(きゅうぜん)と響くを聞けり。ほとんど夢みしところなるか。
目が覚めて、軒先に吊るした鉄の風鈴が、風にきんきんと鳴っているのが聞こえた。
(なるほど―――)
夢の中で聞こえていたのは、この音であったか。
そこで、詩を作ってみました。聞いてください。
桐陰清潤雨余天、 桐陰は清にして潤えり、雨余の天、
簷鐸揺風破昼眠。 簷鐸は風に揺れて昼の眠りを破る。
夢到画堂人不見、 夢に画堂に到るも人見えず、
一双軽燕蹴箏弦。 一双の軽燕、箏弦を蹴る。
桐の葉かげのわが部屋は清々しく、しっとりしている。空は雨上がりのさわやかさ。
軒先で鈴が風に揺られて、その音で昼の眠りを覚まさせられた。
さっきまでの夢の中で美しい広間に行ったのだが、ひとかげは見えず、
ひとつがいのツバメたちが軽やかに、琴の弦に足を触れているばかりであった。
いかがでしょうか。
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宋・放翁・陸游「夏日昼寝」詩。
陸放翁は若いときの最初のヨメが忘れられずに晩年まで思い出したりしているので、そのことを少し匂わせて訳してみました。この詩を作ったとき、放翁は数えで五十六歳。実は今のおいらと同い年のような気がするが、当方も昼間から居眠りしてるんだから体力的には同レベルなのであろう。