平成29年5月19日(金) 目次へ 前回に戻る
数人分の食い物を独り占めして一食で食ってしまう者はエンゲル係数に苦しむものであるが、豊かなひとも時にはいたようである。
週末です。本来の姿に戻ります。すると、「ぶうぶう」とではなく、「ゲロゲロ」と鳴くこともあるのだ。
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明の時代のことでございます。
上海の嘉定・婁頭鎮という裏に、王全というひとがいた。
王全、家饒於貲、為人偉躯大腹飲啖兼数人、不能疾趨。
王全、家は貲に饒(ゆた)かなり。人となり偉躯、大腹にして飲啖すること数人を兼ね、疾趨するあたわず。
王全の家は財産が多く、裕福であった。個人としては、からだがでかく、腹回りが大きくて数人分飲み食いした。太っていて、急ぎ走ることはできなかった。
苦しそうですね。
彼はお風呂に入るとき、風呂のまわりに幕を下ろさせ、
妻子婢僕皆不得在傍、且戒勿妄開。
妻子婢僕もみなかたわらに在るを得ず、かつ戒めてみだりに開くこと勿らしむ。
女房・子供、下女・下男の誰もそこに入って来させなかった。また、その幕を滅多に開かないように言い聞かせていた。
ハダカでいる姿を見られたくないようなのです。
ところがある日、
入浴久無水声、家人恠之掲視。
入浴するも久しく水声無く、家人これを恠(あや)しみて掲げ視る。
入浴しているはずなのに、長い間、水音がしない。家族はどうしたのか心配になって、幕をあげて中を見てみた。
すると―――
但見一蝦蟇、大如斗伏其中。
ただ一蝦蟇の大いさ斗のごときがその中に伏すを見るのみ。
一匹の、一斗樽ぐらいのでかいガマが、風呂の中にうずくまっているのが見えるばかりであった。
どこにも王全の姿はない。
ガマを見つめると、ガマの方もじっとこちらを見ている。
「・・・・・・・・」
家族は驚いたが、
復因之。
またこれに因る。
何も無かったかのように幕を下ろしてもとに戻した。
そして、お互い何も言わなかった。
しばらくすると、
已而出。
已にして出づ。
王全は風呂から出てきた。
しかし、
恍惚、若有所失。是夕死。
恍惚として失うところ有るが如し。この夕べ、死す。
ぼんやりとしていて、心神を喪失してしまったかのようであった。そして、その晩、死んでしまったのであった。
かわいそうです
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明・陸燦「庚已篇」より。
ふとったやつは見られるとその日の晩に死ぬことが、あるようである。気をつけなければ・・・ゲロ、ゲロ。