「にょこんでポンポコ」「だんこんでコン」
「今日はおひなさま、オンナのコのお祭りですよーー!」
・・・と、おいらのコドモのころには言ってました。遠いむかしのことでございます。今の時代、そんなことを口走ったら、ジェンダーのなんやらLGBTのなんやらで共謀罪に問われかねないおそろしい思想の持主と疑われてしまいますから、おいらはそんなこと言いませんよ。
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でも今日はオンナの力について、歴史的な事件を題材に学んでみましょう。
於霊廟寺玉門池、冬月衆蛙集鳴三四日、国人怪之、問於王。
霊廟寺玉門池において、冬月に衆蛙集まりて鳴くこと三四日、国人これを怪しみ、王に問う。
都の霊廟寺の玉門池で、冬の季節だというのに、おびただしいカエルが集まってきて、三日も四日も鳴き続けた。
「これは常のことではないぞ」
ひとびとは不思議がって、王に申し上げた。
この王がオンナのひとだったのです。女王さまであったのだ。
女王さまはそのことを聴くと、すぐに閼川、粥呑という二人の将軍にお命じになった。
錬精兵二千人、連去西郊、問女根谷。必有賊兵、掩取殺之。
精兵二千人を錬り、連れて西郊に去きて、女根谷を問え。必ず賊兵有り、掩取してこれを殺せ。
「精兵二千人を選りすぐって、西の郊外に引き連れて行き、「女根谷」を探せ。そこには必ず敵兵がいるから、やつらを捕捉して、殺すのよ!」
「ははー」
「にょ、女根谷にございますか」
まことに「女根」は女性の陰部を直接指すコトバ、そのものズバリの度合いは、三重県の名産・万古焼や沖縄の漫湖の比ではないのである。
女王さまはおっしゃった。
「女根谷よ!」
「ははー!」
二人の将軍はそれぞれ千人づつの兵士を率いて都の西の郊外に進み、付近の住民に問うたところ、
富山下果有女根谷。
富山の下に果たして女根谷あり。
たしかに、富山という山のふもとに「女根谷」があるという。
「そこだ!」
進撃すると、谷には、
百済兵五百人、来蔵於彼。並取殺之。
百済兵五百人、来たりて彼しこに蔵す。並びに取りてこれを殺せり。
百済の兵が五百人、ひそかに来てそこに隠れていたのだ。二将軍は並行して進み、この五百人を全滅させた。
百済軍を率いていた弓召なる将軍は、南側の嶺まで退却したのだが、これも囲んで弓を射かけて殺した。
そこへ、
有後兵一千二百人来、亦撃而殺之。
後兵一千二百人来たる有るも、また撃ちてこれを殺す。
後詰の兵千二百人が寄せてきたが、総帥の将軍も討たれて統率も取れておらず、二将はこれらも撃破して殺しに殺した。
一無孑遺。
一も孑遺無し。
たったひとりも生きては返さなかったのである。
大勝利である。
この勝利の原因は、明らかに、敵の先遣の兵を早期に発見し、後続の到着する前にこれを撃破した用兵の妙に尽きる。
「王の御指導のおかげにござりまする」
群臣らは王に勝利のお祝いを申し上げた。
それにしても、
何知蛙事之然乎。
何ぞ蛙の事の然るを知るや。
「どうしてカエルのゲコゲコから、敵兵のことをお知りになられたのでございますか?」
女王さまはおっしゃいました。
蛙有怒形、兵士之像。玉門者女根也。女爲陰也、其色白。白西方也。故知兵在西方。
蛙に怒形有るは兵士の像なり。玉門なるものは女根なり。女は陰なり、その色は白。白は西方なり。故に知る、兵、西方に在り、と。
「カエルが怒ったように鳴いている、というのは、兵士たちのようではありませんか。そして、玉門池の「玉門」は、玉のような入口、ということで、女性のあそこのことでしょ。それから、女性は陰・陽の陰に当たります。陰・陽は、色に直すと、陰は白で陽は赤。女性→陰→白、ときて、白色は「五行説」では西を表わす色です(東は青、南は赤、北は、中央は黄)から、西の方に兵士たちがひそんでいる、とわかったのよ」
「なんと」
「そして・・・」
女王さまはお続けになられました。
男根入於女根、則必死矣。以是知其易捉。
男根の女根に入るや、すなわち必ず死せり。ここを以てその捉えやすきを知る。
「殿方のアレが女性のアソコに入ったら、必ず「死ぬ死ぬ」でしょ。だから、女根谷に兵を向かわせれば、撃破できる、と思ったわけ」
「なんとなんと」
「これはこれは」
於是群臣皆服其聖智。
ここにおいて群臣みなその聖智に服せり。
これを聞いて、群臣らはみな、女王さまの聖なるお知恵に感服したのでございました。
とさ。
この女王さまこそ新羅二十七代・善徳女王さま(在位632〜647)で、この事件は仁平三年(636)に起こったこと、と正史に明らかに記されているのでございます。
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「三国遺事」紀異巻一より。
この話は、予知の超能力を持っていたとされる善徳女王の事跡の中でもたいへん有名な事件なので、韓国ドラマ「善徳女王」で紹介されていたそうです。歴史を忘れた民族はえらいことになるそうなのでみんな知っていることなのでしょう。新羅びとと現在のコリアンの間の民族的なつながりはあまり無いらしいといいますけれども。