平成28年12月29日(木)  目次へ  前回に戻る

求道精神は非常に重要である。熱心な調査によって、アンコウがイカの一種である可能性も追求されている。

今日は弟一家と食べ放題でメシ食ってきた。わしも弟夫婦もだんだん食べる量減ってきたなあ。しかし姪っ子はどんどん食うようになってきた。もう少しで驚き怪しむほど食い始めることであろう。自分らの若いころが思い出されるものである。

そういえば、若いころ、コンパなどで酔って寝てしまうと、顔にマジックでヒゲとか書かれていて翌朝困ったことがあったぞ。そのとき僧侶にしてくれていたらよかったのであるが。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ブッダが祇園精舎におられたとき、

有酔婆羅門、来至仏所、欲作比丘。

酔える婆羅門(ばらもん)有りて、仏所に来たり至り、比丘に作らんと欲(ねが)う。

酔っ払ったバラモン階級の男子がブッダのいますところにまでやってきて、「わしを坊主にしろ」とからみはじめた。

しかもこいつはあろうことかブッダの御前にて、

ぶう、ぶう。

といびきをかいて眠ってしまったのである。

ブッダは弟子の僧侶たちに命じて、

与剃頭著袈裟。

ために頭を剃り、袈裟を著せしむ。

この酔っ払いの頭を剃り、袈裟を着させて出家させてやった。

―― 一時間経過 ――

バラモンの男は

酒醒驚怪見身、変異忽為比丘、即便走去。

酒醒めて驚き怪しみて身の変異して忽ち比丘と為るを見、すなわち走り去れり。

酔いから覚めて、自分の様子が変わって僧侶になっているのを見て、「うひゃあ、坊主にされてしまいまちた〜」と驚き怪しんで逃げ出して行った。

あははは。

と腹を抱えて笑っていたいところですが、求道者としては笑ってはいられない。ブッダのお考えを知らねばならないのである。

諸比丘問奉仏、何以聴此酔婆羅門、而作比丘、而今帰去。

諸比丘、仏に問い奉らくは、「何を以てこの酔婆羅門を聴(ゆる)して比丘と作し、しかも今帰り去らしむや」と。

弟子の僧侶たちはブッダにご質問申し上げた。

「どうしてあの酔っ払いのバラモン男の(酔った上での)出家の願いを聴きいれて僧侶にしてやり、その後で今度はきゃつが逃げ出していくままにさせたのでございますか」

ブッダはおっしゃった。

此婆羅門、無量劫中、無出家心。今因酔後、暫発微心、為此縁故後出家。

この婆羅門は、無量劫中に出家の心無し。今酔後に因りて暫く微心を発し、この縁のためなるが故に後に出家す。

「あのバラモン男は、これまでの輪廻の無限の時間の中で、一度も出家して僧侶になろうというキモチなど持ったことがなかった。それが、さきほど、酔っぱらった上でのこととはいえ、ちょっと出家してみようかな、と言い出したので、出家させてやったのである。(今回彼は本心からの出家ではなかったのでああやって帰って行ったが)、今後何度も生まれ変わるうちに、必ず本当に出家する因縁になるはずなのだ」

と。

如是種種因縁、出家破戒、猶勝在家持戒。以在家戒不為解脱。

かくのごとき種種因縁あり、出家の破戒はなお在家の持戒に勝る。在家の戒は解脱のためならざるを以てなり。

このようにいろいろなことがあって、出家した者が戒律を破るのは(それだけで次はジゴク行きであるが、)ずっと未来まで考えると、出家していない者が戒律を守っているのよりずっと効果があるのである。出家していない信者の戒律は、いかに厳格に守ったとしても、それによっては決して輪廻から解脱する効果はないのである(。将来に出家する因縁を作るためのものでしかないのだ)。

―― 合掌 ――

なんだそうです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「大智度論」第十三より。ただし上記は「正法眼蔵」巻七十五「出家」に引用せられているのを再引用した。

酔っ払っている間にマジックのヒゲ、でなくて髪の毛まで剃られていたら、イジメのような気もいたしますが、因縁のためだったんです。それならしかたがないなあ。なお僧侶の飲酒についてはこちらのタイプも参照ください。→「酔僧登座」

ところで肝冷斎は明日からしばらく音信不通となります。ゲンダイ社会の強大な圧力によって、電波の届かない、暗くジメジメした地下の国に追放されることになったんです。みなさん、さようなら。(良いお年をお迎えください。)

 

次へ