週末も忍者を残してさっさと引き上げていくリアル社畜たち。週明けにたいへんなことになるカモ。
今日も寒かった。仕事にもまた追い詰められており、来週は月曜日からたいへんなことになる・・・ように感じるが、地下生活しており会社には行っていないはずなので気のせいであろう。気のせいなのだ。
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週末なので趣味に夢中になっていた人の話でもしましょう。
晋の時代のことですが、
祖士少好財、阮遥集好屐。
祖士少は財を好み、阮遥集は屐(げき)を好む。
祖約(字・士少)は宝物が大好きで、阮孚(字・遥集)はゲタが大好きであった。
併恒自経営、同是一類、而未判其得失。
併せて恒に自ら経営し、同じくこれ一類にして、いまだその得失を判ぜず。
どちらも、好きなモノを他人任せにせず自分で管理しており、よく似た者同士で、どちらが優れているか劣っているか、誰も判定したことがなかった。
二人とも当時の名族であり、夢中になっているモノについて優れるも劣るも無いように思いますが、当時のひとはいろいろ人の評価をするのに夢中だったので、この二人についてもいずれは判定せねばならなかったのである。
ある日、ある人が祖約の家を訪ねた。
祖約はちょうど
料視財物。
財物を料視す。
宝物類の点検をしていたところであった。
客至、屏当未尽、余両小簏、著背後傾身障之。意未能平。
客至り、屏当するもいまだ尽さず、両小簏を余して、背後に著し、身を傾けてこれを障(さえぎ)る。意いまだ平らぐあたわず。
客人が来たというのでしまい込んだのだが、すべてしまい尽くすことができず、二つの小さな竹製の箱がまだ残っていて、これを自分の背後に隠し、体を傾けて相手に見えないようにしていた。それでもまだ安心できてないようであった。
その人は、それから阮孚のところを訪ねた。
すると阮孚は、
自吹火蠟屐、因嘆曰、未知一生当著幾量屐。
自ら火蠟を屐に吹き、因りて嘆じて曰く、「いまだ知らず、一生幾量の屐を著するべきやを」と。
自ら火に溶かした蠟をゲタの底に塗りながら(←そうすると歩きやすくなるものであったらしい)、ため息まじりに言った。
「人生のうちにあと何足のゲタを履けるのか、わからないからなあ」
そうして
神色閑暢。
神色閑暢たり。
その様子、のんびりゆったりとしていた。
「なるほど、これでわかった」
于是勝負始分。
ここにおいて勝負始めて分ず。
これでとうとう勝ち負けがはっきりしたのであった。
好きなモノを人に見られるだけでもイヤだと必死になって隠していた祖約より、人に見られている前で手入れしていた阮孚の方が、人柄が閑雅で、勝ち―――ということのようである。
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「世説新語」雅量第六より。
しかしゲンダイの優れた目から見たら、より強く好きなモノに執着した祖約の方がより高い評価を受けうるのではないか、という気もします。しかしながら、祖約は後に予州知事に在任のまま蘇峻の乱に乗じて謀反を起こして失敗、華北に建国した後趙の石勒のもとに亡命して、ついには石勒に誅殺されるに至ったという人なので、ニンゲンとしてやはり不安定な部分を持った人だったのであろう。