秋となり、腹を空かしたクマが狙っている。でもイヌを飼っていたら、イヌをおとりに出来るカモ。
なんとか週末。ほっとして、また食べ過ぎそうになってがまんした。しかしそれでも体重は微増。
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清の時代のことでございますよ。
呉県有無頼子、曰小老鼠。
呉県に無頼子有り、小老鼠と曰う。
浙江・呉にひとりのやくざものがいた。チビねずみ、と呼ばれていた。
ある日、むかしその「チビねずみ」の隣に住んでいた某という、これもいい加減なやつであったが、そいつが門によりかかってぼんやりしていると、
忽見其乗輿導従而来、状如官府。将及門。
忽ちその輿に乗じて従を導きて来たり、状の官府の如きを見る。まさに門に及ばんとす。
突然、その「チビねずみ」が、輿に乗り、おつきの者を従えて、お役人のようにやってきたのを見た。その輿は某の家の門の前をとおり過ぎようとしたのである。
本来ならお役人が通るなら、庶民は立ち上がって黙礼していなければならないのだが、某はぼんやりと座ったままで輿の上に乗っているチビねずみを見ていた。
すると、
遂加訶責。
遂に訶責を加えらる。
輿の上から、「座ったままではならぬぞ!」と叱責の声が飛んだ。
「はあ? なにをエラそうに・・・」
某はもともとチビねずみを見下していたので、怒鳴り返した。
爾便做禿頭判官、亦恐嚇不得郷里。忘却偸雞時被人拿住、我為爾説情分、免送捕衙拷下截耶。
爾、すなわち禿頭判官と做るも、また嚇(いか)りを恐れて郷里を得ざらん。雞を偸みし時、人に拿住せられ、我の爾のために情分を説きて、捕衙に送られて拷下に截せらるを免れしを忘却せしか。
「おまえなんか、禿げ頭の下っ端役人になったとしても、生まれ故郷にはコワくて帰れまい。ニワトリを盗んでとっ捕まったときに、わしがおまえのために涙ながらに説いてやって、おかげで警察に送られて拷問の上に首ちょんぎられるのを免れた、それを忘れたとは、よもや言うまいな」
「なんじゃと! 役人に対して不遜であるぞ!」
とチビねずみも怒り出し、
正喧嚷フ、家有黄犬咆哮而出。
正に喧嚷せんとする間に、家に有る黄犬、咆哮して出づ。
まさに喧嘩になりそうになったとき、なにがしの家で飼っている黄色い犬が出てきて、ちびネズミに吠え掛かった―――
すると、またたく間に、
輿従忽不見。
輿従たちまちに見えずなりぬ。
輿も従者たちも、消え去ってしまったのであった。
「あれ? そういえば・・・」
某はそこでやっと思い出したのだが、
小老鼠死後半載。
小老鼠、死後半載なり。
よく考えてみると、ちびネズミのやつが死んでから、もう半年も経っていたのであった。
「死んだやつが現れたのか」
それも不思議であったが、それよりも
未知無頼子以何陰徳遽作冥官。
いまだ知らず、無頼子の何の陰徳を以てにわかに冥官と作れるかを。
あんなやくざものがあの世で役人に出世できたのは、どんないいことを隠れて行っていたからなのだろうか?
そのことの方が不思議でならなかった。
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清・朱海「妄妄録」巻十二より。イヌは役に立ちますね。