平成28年7月2日(土)  目次へ  前回に戻る

←事を為すには、彼らこそお役に立ちましょう。くっくっく。

今日は暑かったです。

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暑くてもうろうとしながら道を歩いておりましたら、六頭立てのピカピカの馬車が向こうから来まして、わしの目の前で止まると、中からは豪華な衣装を着、かぶった冠からはいくつも玉の飾りを垂らした立派な身なりの方が、何人かのおつきを連れて現れまして、

「そちは肝冷斎じゃな」

と声をおかけになった。

「なんですかな?」

と答えますと、立派な身なりの方は、

「肝冷斎よ、我が王朝に仕えぬか?」

と言うのである。

「むむ!」

めんどうなことに巻き込まれそうな気がしたので、その場で「ぼよよ〜ん」と変化して童子形をとりまして、

「おいらは肝冷斎ではございまちぇんよ。肝冷童子でちゅよ」

と答えました。

そして、申し上げた。

「たしかに、

方今干戈未尽戢、夷狄未尽賓、麟鳳亀龍未尽游郊藪、草木魚龞未尽被雍熙。

方今、干戈いまだことごとくは戢(おさま)らず、夷狄いまだことごとくは賓せず、麟・鳳・亀・龍いまだことごとくは郊藪に游ばず、草・木・魚・龞いまだことごとくは雍熙を被らず。

現在、戦争はすべて収まったとは申せません。外国がすべて通交してきているというわけでもございません。太平の世に現れるというキリンや鳳凰や黒い亀やドラゴンといったドウブツが(一部は出現しているようですが)すべて郊外の原野に出現したという報告もございません。また、草や木や魚やすっぽんに至るまで、あらゆるドウブツにまで和らぎと楽しみで覆われている、とは申せません。

もうちょっとのところではありまちゅが、なお、

当大有為之時。

大いに為す有るの時に当たれり。

大きな仕事をしなければならない時世でありましょう。

あなたちゃまのような立派な方は、

得非常人之佐、然後能上宣聖徳、以代天工。

非常人の佐を得て、しかる後よく上に聖徳を宣して、以て天の工に代われ。

ふつうでないすぐれた人の助けを受けて、それによって聖なる徳を上から広め、天に代わってしごとをしていただかねばなりません。

如臣等類、実不克堪。

臣らの類の如きは、実に堪うるあたわざるなり。

おいらたちのレベルの者どもでは、まったくそんなお助けをできるようなものではございませんよ。

どうぞお願い申し上げたいのは、おいらたちなどは放っておいて、

博選周行、旁及巌穴、天生聖主、必有賢臣。得而授之、乃可致理。

博く周行に選び、あまねく巌穴に及べば、天の聖主を生ずるに必ず賢臣有らん。得てこれに授くれば、すなわち理を致すべし。

広くいろんなクラスのひとから選び、あちこちの洞穴に住んでいるような隠者までお探しになれば、天があなたのような聖なる指導者を生んだのでございますから、必ずやそれを補佐する賢い臣下を用意しているはずでございます。そのような補佐者を得てそのひとに権限を授けて働かせたならば、太平の治をもたらすことができましょう。

でございまちゅるぞ」

と。

立派な人は、

「そうかあ、コドモか。コドモにしごとをさせるわけにはいかんもんなあ」

と言いまして、おつきの者たちとともに去って行ったのでちた。

ああ、シゴトしなくてよかった。来週からもシゴトしないように気をつけないと。

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ちなみに、おいらが申し上げたコトバは、唐・韓愈「為裴相公譲官表」(裴相公のために官を譲るの表)の一部です(「唐宋八家文読本」による)。これは宰相であった裴度さまの辞表を代筆したもの。裴度さまがどんな人かは、このへん(元和の変)をご覧ください。

今日はダッカで日本人が多数殺されたらしい。まだ事件の全体はわからぬが、悲しく、悔しい。

 

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