金曜日終わったー! 今日はロシアに隕石が墜落。こちらにも来るんなら今日明日で頼んます。どうせだったら幸せな気持ちのままみんなと・・・。
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元和の変、続き。
同じころ、裴度は通化里の邸を出た。
坊門を出たところで、誰何もなにも無しに、
盗三以剣撃度。
盗、三たび剣を以て度を撃つ。
凶行者(テロリスト)は、裴度に向かって三度、剣を振りおろしたのだった。
これは単独犯であったようである。彼は、これが裴度である、と知ることができる者だったのであろう。また、裴度は武元衡と違って随従の数をきわめて少数、一人二人にするのが常であったから、そのこともよく知った犯行であった。
初断鞾帯、次中背、纔絶単衣。復微傷其首、度堕馬。
初め鞾帯を断ち、次に背に中(あた)り、わずかに単衣を絶す。また、その首を微かに傷つく。度、馬より堕ちたり。
第一撃は、(馬上の)度の「くつ」の紐に当たり、これを真っ二つにした。第二撃は度の背中を撃った。これは上着を切り裂いた。第三撃は度の後頭部を狙い、確かに頸筋に切りつけた。その傷は浅かったものの、度はもんどりうって馬から落ちたのである。
あっという間のみごとな斬撃であった。しかし、
会度帯氈帽、故瘡不至深。
たまたま度、氈帽を帯ぶ、故に瘡深きに至らず。
その日は裴度は毛皮の帽子をつけており、これが首筋を守ったので、傷は深手にならずにすんだのだった。
「あわわ」
裴度は後頭部から血を流しながらも、すぐ立ち上がって逃げ出す。
「ち」
仕留めそこねて舌打ちし、
賊又揮刃追度。
賊、また刃を揮いて度を追う。
凶行者はさらに刀をふるうて裴度を背後から追った。
と、
「行かせぬ・・・、誰か、誰かーーーー!」
度従人王義持賊、連呼甚急。
度の従人・王義、賊を持し、連呼すること甚だ急なり。
裴度の随従は王義といい、彼は凶行者を後ろから摑み、大声で人を呼び続けたのである。
「く、ゲスが!」
賊断義手而逸。
賊、義の手を断じて逸す。
凶行者は王義の両腕を斬り落として、彼を突き放した。
そしてふたたび裴度の後を追おうとしたが、そのときには、
度已堕溝中。
度すでに溝中に堕つ。
裴度は道端のどぶ川に落ちていた。
どぶ川の中に、ぼろ雑巾のように横たわって、身じろぎもせぬ。凶行者は、一瞬降りて行ってとどめを刺そうかと身構えたようであるが、そのとき王義の叫び声を聞きつけた警邏たちが高提灯を手に向こう横丁を曲がってくるのが見えた。
賊謂度已死、乃捨去。
賊、「度すでに死せん」と謂いてすなわち捨て去る。
凶行者は、
「裴度・・・。このようすでは生きてはおるまい」
と呟くと、とどめを刺さずに立ち去ったのであった・・・・。
(結局裴度はなんとか一命を取り止め、後、中唐の時代を代表する名臣として活躍することになる。)
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以上、「新唐書」巻173「裴度伝」より。見てきたように言っておりますが、ちゃんと史書の記述に基づいておるのですぞ。
さてさて、暁方に起こったこの大事件に驚いたのは、憲宗皇帝であった。・・・・・・(以下、そのうち)