平成28年5月19日(木)  目次へ  前回に戻る

ソーセージとかジャガイモとか美味そうに見えるが・・・。

もうイヤになってきている。すべてが。

・・・・・・・・・・・・・・・・

彘肩肉、赤凝脂、白登俎。

彘(てい)の肩肉、赤くして脂を凝らし、白くして俎に登る。

ブタの肩の肉だ。ロースだ。ぶっひっひ。

赤い肉から脂肪がとろり。

白い脂身つきでまないたの上に置かれている。

ああ、うまそうだなあ。

更持包丁手、鑾刀磨石刃如霜。

更に持す包丁手、鑾刀(らんとう)石に磨いて刃の霜の如きを。

おまけに料理人の手には、鈴のついた刀――研石で磨いてぎとぎとに霜のような白い光を放つやつ――が握られている。

料理してくれるのだ。

坐客看之相嚼久、塩梅初和人争喫。

坐客これを看て相嚼すること久しく、塩梅初めて和して人争いて喫う。

座っている客人たちはこれを見て、顔を見合わせながら口をもごもごさせて待つこと久しい――

やっと塩・梅の調味料が適切に添えられたので、みんな争うように食べ始めた。

ぶっひっひ。ぶっひっひ。ぶっひっひ。

食べ終わると、

口飽情閑何欲有。

口は飽き情は閑に、何か有るを欲せん。

腹いっぱいになって心のどかになりました。まだ何か欲しいものがあるか?

君不見漢家一壮士、挍剣寧辞一杯酒。

君見ずや漢家の一壮士、剣に挍(か)うるもなんぞ辞せん一杯酒。

おまえさんは見たことがないのかい、あの漢の国のいいおとこを。

やつは剣と交換してでも一杯の酒を飲まないではいられないのだ。

「漢家の壮士」とは、あるいは漢の高祖に仕え、高祖が項羽に追い込まれた鴻門の会の際に、剣で俎上の肉をぶったぎってそのまま食い、項羽らをたまげさせて主君が逃げる時間を稼いだという勇士・樊噲をイメージするか。そうでなければ酒で身上を潰していくただの呑み助でしかないような・・・。

・・・・・・・・・・・・・・

本朝・仲雄王「雑言・彘肩」「経国集」巻第十四)。仲雄王は平安初期の漢文人で、九世紀初頭、藤原冬嗣らとともに「文華秀麗集」を編む。空海・最澄らとも親交があったそうです。ぶた肉好きだったんですね。

こちらはもう食べ物も味しなくなってきた(ただしパーコー麺食ったが)。職場(≠「シゴト」)にここまで追い込まれるとは。

 

次へ