梓弓春山近く家居らば継ぎて聞くらむうぐひすの声(万葉・巻十)「おまえホントにうぐいす?」「ホキョ?」
日に日に春めいては来ますが、日に日に職業人としての状況はワルくなっていくようである。
・・・・・・・・・・・・・・
噉飯著衣、生世無補、飾巾待壙。顧影多慙。
飯を噉らい衣を著(つ)け、世に生きて補う無く、巾を飾って壙(こう)を待つ。影を顧みて慙(は)ずること多し。
「巾」は頭巾ですが、「飾る」と言っているので、ここでは読書人・士大夫としてかぶる頭巾のことをいうようです。「壙」は「墓穴」。
メシを食って服を着て、人並みに世の中を生きても何の役にも立たず、えらそうに頭巾をかぶって墓穴に入るのを待っている。(おいらはこんなものだ。)
自分の影を振り返ってみて、申し訳ないキモチでいっぱいである。
みたいな気持ちです。
ああ。
おいらの人生は、
庶幾哉、白魚蠧簡、食奇字于腹中、黄鳥度枝遺好音于世上。
庶幾(ちか)いかな、白魚の簡を蠧(むしば)みて奇字を腹中に食らい、黄鳥の枝を度りて好音を世上に遺すに。
「白魚」は「紙魚」(しみ)、紙くい虫のこと。
紙魚(しみ)が書簡をむしばんで、(そこに書かれている)ほかにないような不思議な文字を腹いっぱいにためこんでいるのとか、
うぐいすが枝から枝へと飛び渡りながら、世の中に美しい声音をのこしていくのとか、
そんなのに似ているみたい。
非職業人としてはワルくはないのだが。
・・・・・・・・・・・・・・・・
明・屠隆「清言」より。
追い込まれています。職業人としては。