取り返しのつかないような失敗しても、神様がなんとかしてくれるでぴょん・・・カモ。
明日が来る。おそろしい明日、月曜日が。
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(前略)大きな袋を背負った大己貴(おほなむち)のみことが訊ねました。
「おいおい、ウサギよ、いったい何を泣いているのだ?」
ウサギ、答えて言う、
僕在於岐島、雖欲渡此地、不由渡伝。
やつがれ、於岐島(おきのしま)に在りて、この地に渡らんと欲すといえども、渡り伝うに由(よし)あらず。
おいらは、隠岐の島(「沖ノ島」説もあり)に棲んでおりまして、こちら(本州)の方に渡ってきたいと思っていたのですが、(陸地を)伝わって渡ってくる方法が無くて困っていたのでございます。
でぴょん。
やがていいアイデアを思いついたのでございまぴょん。
欺海和邇、言、吾与汝競欲計族之多少。
海の和邇(わに)を欺きて言わく、「吾と汝(いまし)、競いて族(やから)の多き少なきを計(かぞ)えんと欲す」と。
海のワニを騙して、「おいらとおまえ、どちらの一族の方が多いか少ないか、数を比べてみようではないか」と持ちかけたのでぴょん。
「ワニ」はワニではなくて「わにざめ」のことなんです。
サメは素直ないいやつでしたので、「よし、比べてみよう」と一族を集め、オキの島からケタ(「気多」)の岬まで、ワニの族たちは背びれを並べて列を作った。
「おーけー。では、
爾吾踏其上乍走読渡、爰知与吾族、孰多。
爾、吾、その上を踏みて走りながら読み渡り、ここに吾が族といずれか多きを知らん。
おまえ、おいらはおまえたちの背中の上を踏んで走りながら、数をかぞえて向こう岸まで行く。そうすることで、おまえの一族とおいらの方と、どちらが多いかわかることになるだろう」
「わかったワニ」
そこでおいらはぴょんぴょんと、サメのやつらの背中の上を履みながら、数え数えこちら側までやってまいりました。
今将下地時吾云、汝者我見欺。
今、まさに地(つち)に下らんとするの時、吾が云わく、「汝は我に欺かれぬ」と。
そして、ちょうどこちら側の地面に到着したとき、おいらは言ったんです。「おまえはおいらにだまされたんだよ」と。
そしたら、
言竟則伏最端和邇捕吾悉剝我衣服。
言い竟(おわ)れば、すなわち、最(いと)端(はし)に伏せる和邇、吾を捕らえてことごとく我が衣服を剥げり。
言い終わった瞬間、一番こちら側にいたワニ(サメ)が、「なんだと」とおいらに噛み付きまして、おいらの衣服(毛皮)を全部剥いでしまったのでございます。
「いてて・・・」
と、ここで泣いておりましたところ、先におみえになった八十神(やそがみ)さまたちが、おいらに教えてくださることには、
浴塩当風伏。
塩を浴(あ)み、風に当たりて伏せよ。
塩水に浸かって、それからごろごろして風に体を当てなさい。
と。
そのとおりにしておりましたところ、我が身があちこち痛いので、泣いていたのでございます。
「おお、そうか」
大きな袋を担いだ大己貴神(おおなむち・かみ)は、優しく、清水で身を清め、ガマの穂綿を敷いてそこでごろごろするように教えてくれました。
そのとおりにしましたところ、ウサギはもとの姿に戻ったのでございました。
于時兎白大己貴神云、八十神者必不得八上姫。雖負袋而汝命獲矣。
時に兎、大己貴の神に白(もう)して云わく、「八十神(やそのかみ)は必ず八上姫(やかみひめ)を得じ。袋を負うといえども、いましみこと獲たまわむ」と。
そこでウサギはオオナムチの神に申し上げたことには、
――八十神さまたちは、絶対に八上姫さまの心を得ることはできません。袋を背負わされている(一番下っ端の)あなたさまこそ、それを得ることができます。
と。
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伝・蘇我馬子等撰「先代旧事紀」巻四より。
この神話(イナバのシロウサギ)のお話の眼目は、ドウブツ争いでもガマによる治療でもなく、最後のウサギの「言挙げ」にあるのだそうです。要するに予言。ドウブツとかそういう言葉を話すはずがないやつが語る予言は、必ず当たるものなのでございます。ああ、ならば、ブタでもクマでもサルでもイヌでも、おいらが明日から精神の平安を得られる、と予言してくれぬものか。