平成28年2月8日(月)  目次へ  前回に戻る

おいらも解放されたいでガジ。この苦しい「生」から・・・。

本当は今日から丙申年。

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正月元旦にちなんだおめでたいお話でもいたしましょう。

むかしむかし、春秋末ごろの晋の国でのこと。

邯鄲之民、以正月之旦献鳩于簡子。

邯鄲の民、正月の旦を以て鳩を簡子に献ず。

邯鄲(かんたん)の人民が、正月の朝、捕まえたイカルを(生きたまま)簡の領主さまに献上した。

「鳩」は「ハト」ではなく、現代の「鵤」(斑鳩。イカル)を指します。「簡子」とは晋の大貴族・趙鞅さまのこと。邯鄲は当時趙鞅さまのご領地でございました。趙鞅さまは後に晋を分割して「趙」の国を建てることになります。

簡子大悦、厚賞之。

簡子大いに悦び、厚くこれを賞す。

簡の領主さまは大いに喜び、献上した人にたっぷりとお礼をした。

門客のひとりが問う、

「どうしてそんなにお礼をしたのですか?」

簡の領主は答えた、

正旦放生、示有恩也。

正旦に放生するは、恩有るを示すなり。

「正月の元旦に生き物を解放するのは、(わしが)恩愛深いニンゲンだということを示すためなんじゃ」

そう言って、領主はイカルを放してやった。

後年、チャイナでは、生き物を買い取って解放する「放生会」(ほうじょうえ)が広く行われますが、これは仏教の教えに従って罪業を減らすためのもの。春秋・戦国の時代にはまだ仏教の教義は入ってきていませんが、生物を殺さずに生かしてやる、というのは、善い所業、恩愛にあふれた行為だと認識されていたようです。

「いやいや・・・、」

客人は言った。

民知君之欲放之、故競而捕之、死者衆矣。

民、君のこれを放つを欲するを知り、故に競いてこれを捕らえ、死者衆(おお)し。

「人民たちは、あなたが生き物を解放したがるのを知って、そのため競争して生き物を捕えており、その際、多くの生き物が命を落としているのです。

君如欲生之、不若禁民勿捕。捕而放之、恩過不相補矣。

君もしこれを生かさんと欲せば、民に禁じて捕らうるなからしむにしかず。捕りてこれを放てば、恩・過相補わず。

あなたが、もしも生き物を生きさせてやりたい、とお思いなら、人民たちに生き物を捕まえることを禁止なさるのがよろしうございます。捕まえさせて、また解放する、というのでは、「恩」と「咎」とが差し引きゼロになりまする」

簡子曰然。

簡子曰く、「然り」と。

簡子はおっしゃった。「なるほど」と。

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「列子」説符篇より。わかっていただいてよかったですね。ああ、めでたいなあ。

 

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