貝ならばその蓋を閉じて隠れ潜むのだが・・・。
今日は「肝冷斎もどき」を出勤させて、本体は一人でぼけーとしておりました。
夜も更けましたが、「もどき」はまだ帰ってきません。もしかしたら「もどき」とバレたのカモ。
だとすると
「シゴトをサボるとは怪しからん!」
と会社のひとたちがおいらを探しにくるカモ。ああ、不安だなあ。
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宋の時代のお話。
船上生活者たちを束ねる沈暹というおとこがいたのですが、その
十歳児忽不見。
十歳児たちまち見えず。
十歳になるコドモが、突然いなくなってしまった。
みなで手分けして探したが、見当たらない。
・・・ところが、
後両日、聞船板下有声。
後両日、船板の下に声有るを聞く。
二日ほど経って、船板の下からなにやら人の声らしきものが聞こえてきた。
「なにかいるぞ」
発視之、児在焉、昏不能語。
これを発視するに、児在り、昏として語るあたわず。
船板を開いてみたところ、例のコドモが出てきた。「おい」と声をかけたが、ぼんやりしていて口を利くことができなかった。
半日ほどしてやっと話し始めたところを聞くに、
両鬼青巾黄袍、導使遊戯、将擁告中。
両鬼の青巾黄袍なるが、導きて遊戯せしめ、将いて擁して水中に香iお)かんとす。
「はじめ、青い頭巾に黄色い上着の精霊二体があらわれまして、おいらをいろいろ遊ばせてくれて、やがて手を引いて、水の中に沈めようとしたんでちゅ。
そこへ、
忽有白衣人、長身多髯、与鬼闘。
忽ち白衣人の長身にして多髯なる有りて、鬼と闘う。
とつぜん白い服を着た背の高い、ほおひげの多いひとが現れて、精霊たちと闘いはじめたんでちゅ。
白い服のひとが勝って、おいらを背負って
入舟、乃得免。
舟に入り、すなわち免かるを得たり。
舟の板の下に入ってくれたので、溺れずにすんだのでちた」
というのである。
「その人はどこに行ったのか?」
と問うに、
「「しばらくしたら誰かが探しに来てくれるだろう」と言ってどこかに行ってちまいまちたー」
という。
しかし、
舟板櫛比牢密、又加鎖焉。
舟板櫛比して牢密に、また鎖を加えたり。
舟の板は、櫛の歯のように並んできっちりとくっついており、さらに鎖でしばりつけられていたのである。
不知児何以能入也。
知らず、児の何を以てよく入るかを。
いったいぜんたい、このコドモがどうやってその中に入り込めたのか、皆目見当がつかないのであった。
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宋・佚名氏「鬼董」巻四より。
どうやってそんなところに入り込めたのかわからないような場所に入り込んでいる、という「神隠し」の典型的なパターンです。おいらも会社のひとたちに探しに来られたら、この手で行くか。