ぎゅぎゅ、とやる。
うわー!!!! 明日から出勤!
出勤というのは、「シゴト」をしに行くんですよ。年末年始はエサを食べてあくびをしてサボっていたんです。「シゴト」なんかもう勘弁してください〜!
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ところで、ドウブツ園ではエサを食べてあくびをしてサボっているようにしか見えないドウブツたちですが、それだけではないらしいんです。
清のはじめごろ、黔国公さまのお宅では三頭の象を飼っておられました。この象たちはペットとして飼われていたのではありません。「象斬」を行うために養われていたのでございます。
「象斬」とは何ぞや。
象「を」斬るのではありません。象「が」斬るのです。ここでの「斬」は処刑一般をすること。
すなわち黔国公のお宅内で悪さをしたものが出たとき、
凡犯罪当死者令触殺之。
およそ罪を犯して死すべき者、これに触れて殺さしむ。
公が「殺すべし」とお決めになった者を処理する「私刑」の一種として、象に殺させる、ということをしていた。
のでございます。
ある日、象たちの前に引き出されてきたのは、
為象所熟識。
象の熟識するところ為り。
象たちのよく知っている者であった。
象たちの世話もしてくれたことのあるひとであったのです。
三象在房互相推、諉不出。
三象、房に在りて互いに相推し、諉(い)して出でず。
三頭の象たちは、小屋の中でお互いに進め合って、自分は出ようとしなかった。
しかし、係の者から、
「象どの、お願いいたします」
と
促至再四、一象始出。含涙不忍前。
促すこと再四に至りて一象始めて出づ。涙を含みて前(すす)むに忍びず。
二度、三度、四度と促されて、とうとう一頭の象が小屋から出てきた。しかし、目には涙を浮かべ、なかなか罪人の前に進もうとしない。
係の者は、罪人を象の前に座らせて、
列此人罪状。
この人の罪状を列す。
このひとのやらかしたことを読み上げ始めた。
その内容たるや
備極険悪。
極めて険悪を備う。
とにかくひどいことばかりであった。
この罪状を読み上げると、さっきまで目に涙を浮かべていた象が、
大怒。
大いに怒る。
たいへんお怒りになっていた。
そして、象は一声鳴くと、
将鼻捲其人、抛至半空。而下随斃。
鼻を将いてその人を捲き、抛りて半空に至る。しかして下随して斃る。
お鼻をその人に、ぐるぐる、と捲きつけまして、ぎりぎり、と締め上げ、それから、びょよよーん、と空に放り上げた。
どすん。
と落ちて来たときには、死んでいた。
係の者、その死体を検めて、
「ああ、今回の象どののお怒りの激しさよ」
と嘆じたという。
そのひとの、全身の骨が砕けていたのであった。
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清・鄭仲夔「冷賞」巻四より。象さんが「大いに怒」ったというこの人の罪状が気になりますが、本文では全く触れられてないので残念ながら想像するしかありません。
それにしても、ドウブツ園ではのんびり〜の象さんたちですが、コドモたちの知らないところでこんなシゴトもしているのでちゅな。おいらは明日から出勤しても、何のシゴト的なこともできないから、情けない。ドウブツ以下。