はちみつケーキ食いたいおー。
こちら(あの世)はあたたかいんですが、そちら(みなさんの棲む俗世)はまだ寒いんでしょうか。
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―――こんな物語をひとびとが伝えている。
入海採宝有七難。
海に入りて宝を採るに七難有り。
大海に宝さがしに行くひとには、七つの苦難が待ち受けている。
と。
第一番めの苦難は大海中において、
四面大風同時起、吹船令顛倒。
四面より大風起こり、船を吹きて顛倒せしむ。
四方から大風が吹き、船を吹き倒して、転覆させられることがある。
多くのひとがここで命を落とすだろう。
嵐を乗り越えた者にも、二番目の苦難が起こる。
船中欲壊而漏。
船中壊れんとして漏る。
船体が壊れて浸水しはじめることがある。
また多くのひとが浸水した船が沈み、命を落とすだろう。
浸水して船が沈みかけたときに、運よく陸地が見えてくることもあるかも知れない。陸地に着く直前に船が傾き、載っているひとは海に飛び込む。
人欲堕水死、乃得上岸。
人、堕水して死なんとし、すなわち岸に上るを得る。
水に落ちて死にかけるが、幾人かはなんとか陸地に上がれるであろう。
ようやく上陸できたとしても、
二龍上岸、欲啖之。
二龍岸に上りてこれを啖らわんとす。
二匹の龍が追いかけて上陸してきて、そのひとを喰おうとする。
「うひゃあ」
何人かは喰われたが、必死に逃げて、海岸から内陸に向かう。
得平地、三毒蛇逐欲啖。
平地を得るに、三毒蛇逐いて啖らわんと欲す。
ようやく平地に出たと思ったら、三匹の毒蛇が噛み付こうと追いかけてくる。
「うひゃあ」
また何人かが毒蛇に咬まれて斃れたが、どんどん逃げると、
地有熱砂、走行其上、爛人脚。
地に熱砂有り、その上を走行するに人脚を爛(ただ)れしむ。
広大な熱砂の地に出た。まだ毒蛇は追いかけてくる。砂の上を逃げると、熱のために足が焦げ爛れた。
また多くの仲間が、砂漠の中で斃れて行ったが、走り続けると洞窟がある。
「あそこに逃げこもう」
と、たった一人、洞窟に入り込んだ・・・その瞬間、
どどーん!
と轟音がとどろいて、入口の天井になっていた岩が落ちた。
その人は洞窟に閉じ込められたのである。
「ああ」
暗闇の中、
仰視不見日月、常冥不知東西。
仰視すれども日月を見ず、常に冥にして東西を知らず。
仰ぎ見ても、太陽も月も見えない。永遠の暗闇の中で、どちらが東は西かもわからないのだ。
そのひとは絶望した。どうして、宝物などを求めて旅に出たのか。なぜ生まれ故郷で平和で平凡な生活を送らなかったのか・・・。
――――というお話を、シャーキャ・ムニは弟子たちになさりました。
そして、言われた。
若曹亦有此七事。
なんじらにもまたこの七事あり。
修行者よ、おまえたちにも、同じように七つの困難が待ち受けているのだ。
と。
第一の「四方から吹く大風」とは、
謂生老病死。
生老病死を謂う。
生きる苦しみ、老いゆく苦しみ、病いの苦しみ、死の苦しみの四苦をいう。
おまえたちはこの四つの大きな苦しみに吹き倒されそうになるだろう。
第二の「船体が壊れて浸水する」とは、
謂六情所受無限。
六情、受くるところ限り無きを謂う。
眼・耳・鼻・舌・身・意の六つの感覚器官が刺激され、外界からの影響を逃れることができないことをいう。
おまえたちは外界からの刺激を常に受け続け、船が浸水するように誘惑されていくことだろう。
第三の「水に落ちて死にかける」とは、
謂為魔所得。
魔の得るところを為るを謂う。
魔物たちに捕らえられてしまうことをいう。
おまえたちは魔物に捕らえられると、誤った見解に執着して離れられなくなることだろう。
第四の「二匹の龍」とは、
謂日月食命。
日月の命を食するを謂う。
太陽と月の二者がめぐり、時が過ぎると、残された生涯がどんどん短くなることをいう。
おまえたちは何事もなさずに人生を徒過していくことだろう。
第五の「三匹の毒蛇」とは、
謂人身中三毒。
人身中の三毒を謂う。
人間の内にある「むさぼり」「いかり」「おろか」、すなわち貪・嗔・痴(とん・じん・ち)の三つの悪い欲望をいう。
おまえたちはこの三毒に知らず知らずにとりつかれ、取り返しがつかないぐらいに支配されてしまうことだろう。
第六の「足を爛れさす熱砂」とは、
謂地獄中火。
地獄中の火を謂う。
地獄の中でおまえたちを焼く業火のことだ。
おまえたちは自分の作った因縁によって、長い時間をジゴクで過ごさねばならなくなるだろう。
第七の「仰ぎ見ても太陽も月も見えない闇」とは、
謂受罪之処、窈窈冥冥、無有出期。
罪を受くるの処、窈窈冥冥として出期ある無きを謂う。
罪業による苦しみを受ける間、いつ果てるとも知れぬ暗闇の中にあることをいう。
ああ。
シャーキャ・ムニはおっしゃった。
当識是言、莫与此会。 まさに是の言を識るべく、この会をともにするなかれ。
勤行六事、可得解脱。 六事を勤行(ごんぎょう)して、解脱を得べし。
この物語をよく理解せよ。
そのようなわざわいの旅に出るではないぞ。
六つの大事なことにいそしみ実行し、
苦の世界を脱け出そうではないか。
「六つの大事」とは「布施・持戒・忍辱・精進・禅定・般若」の六つの波羅蜜(パラミータ・行うべきこと)をいう。
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後漢・失訳「雑譬喩経」巻下より。
われらは宝物を外に求めるのでなく、今この場所で為すべきこと為すべし。シャーキャ・ムニのありがたい教えです。もろびとこぞりてたたえまつるべし。
え? ちょっと待った? それは違う方の聖人ですと?
なんと!
それでは明日、明後日はちょっと出直してあたたかいところで勉強しなおしてきますので、更新お休み。