さるの方がうまいカモ。
今日はマグロ三昧。コドモの食べるものではありませんよね、
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タコの方がうまいというひともおられまちゅう。
千手観音蛸手多、 千手観音、蛸の手多く、
刺懸柚酢拝如何。 刺して柚酢を懸けて拝するに如何せん。
これは千手観音さまであろうか、というぐらいタコの足は数多い。
刺身にして柚子の汁をかけてしまえば、拝もうとしてもどうしようもあるまい。
佐州一味天然別、 佐州の一味なれば天然に別、
他禁戒任老釈迦。 他(か)の禁戒、老釈迦に任せん。
佐渡で獲れたというやつだから、自然に特別なうまさである。
(生類を食うなという)戒律は、シャカのじじいに任せておけばいい。
この詩、おそろしいことに室町時代のくそ坊主の作である、というのでちゅう。
このくそ坊主、こう言ってタコをたらふく食ったあと檀家に呼ばれて供養に出かけ、そこでも酒を飲んでついに嘔吐してしまった。
吐いたものの中にタコがあったから、檀家の者は「こんなものを食べるなまぐさ坊主であったか」と追い返そうとしたところ、坊主がいうには
「おまえさん、六波羅蜜寺の空也上人の像を見たことがないのか」
檀家曰く、
「見たことがあるが、あの像が吐き出しているのは「南・無・阿・弥・陀・仏」の六字をかたどった仏像ではないか」
坊主曰く、
「おまえさんは、空也上人がホトケを食ったと思っているのか」
「ホトケを食うはずがなかろう」
「そのとおり。食わなかったモノを吐き出すことがあるのじゃ」
「・・・・・・」
檀家は笑って坊主への寄進を続けた、とも、「うるさい、くそ坊主」と追い出した、ともいう。
なお、このくそ坊主は一休宗純であったとのことでちゅう。タコを食べるとは怪しからんでちゅう。
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「一休咄」(いっきゅうばなし)より(安藤英男「一休」(1985)所収)。
戒律を破って既成秩序に反抗する一休さん、かっこいい・・・とコドモは思うかも知れませんが、歴史実在としての一休宗純の足跡は近江・山城・河内・和泉に限られるとされるので、越後や佐渡に行ったことはないのだそうである。