「見るな」と言われるとじっと覗いているのがコドモというものだ。
ダメじゃ。今日の話はコドモにはショックが強すぎるかも知れんので、コドモ立ち入り禁止じゃ。
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浙江東部の地方は
俗事鬼信巫。
鬼に事(つか)え巫を信ずるを俗とす。
一般に精霊に奉仕し、巫女を信仰する風俗である。
現在(明代)の数十年前のことだが、開化県の太末山中に
有一神巫降神。
一神巫の神を降せるあり。
ある巫女が、神霊に憑りつかれたことがあった。
するとその巫女は、
―――ひいっひっひっひっひ!
と笑いながら、
能手持利刃、自屠其腹。
よく手に利刃を持し、自らその腹を屠る。
手にぎとぎとに切れそうな刀を持って、自分の腹をかっさばいた!
血しぶきが噴き出たが、神が憑いて正気を失っている巫女は痛みも感じないらしい。
続いて、別の巫女に大きな斧を持たせて、自らはあおむけに転がり、
巨斧斫胸。
巨斧をして胸を斫らしむ。
大きな斧を振り下ろして、自分の胸のところをざっくりと切らせた。
それからまた「ひょい」と立ち上がると、
跣足行火磚上、口含沸油噀人。著人体膚立見糜爛、而其口都無所傷。
跣足にて火磚の上を行き、口に沸油を含みて人を噀(ふ)く。人体に著けば膚たちまちに糜爛せるを見るも、その口はすべて傷つくるところ無し。
はだしで火で熱せられたレンガの上を歩き、口には沸騰した油を含んで、これをひとに吹きかける。この油がひとの体につくと皮膚はたちまち焼け焦げてどろどろになるほどの熱さなのだが、巫女の口の方はまったく傷ついていないのである。
またあるときは、
―――ぎゃー! ぎゃー!
と、
狂叫登山、手抜大竹。
狂叫して山を登り、手にて大竹を抜く。
狂ったように叫びながら山を駆け上り、手で大きな竹をひっつかむと、「ぐい」と引っこ抜いてしまった。
そして、
揉作繞指柔、以自纏縛其体。
揉み作(な)して指を繞るまでに柔らげ、以て自らその体を纏縛す。
ぐにゃぐにゃと竹を揉んで、指のまわりに巻けるぐらい柔らかくすると、その竹で自分の体をぐるぐる巻きにするのであった。
彼女らの異常なことかくの如くであったのだ。
屠隆礼部少時読書山中、目撃之。
屠隆礼部の少時山中に読書するに、これを目撃すなり。
礼部官の屠隆が少年時代に林間学校で勉強していて、その目で見たことである。
そうである。
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明・銭希言「獪園」第四より。うっしっし。コドモはこういう怪異なお話がだいすきでちゅ。興奮して血沸き肉躍る。あ、はなぢも。