風の音にぞおどろかれぬる。
そろそろ朝晩は涼しくなってまいりました! もう夏も終わり、収穫の季節の前にしばらく休みたいものだが。
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晋の隆安年間(397〜401)のこと、浙江・呉興の地に
有人、年可二十、自号聖公、姓謝、死已百年。
人有り、年は二十ばかり、自ら聖公にして姓は謝、死してすでに百年なりと号す。
ある人が出現した。その人は二十歳ぐらいに見える容貌で、自ら
「わたしは聖なる人で、姓は謝であります。死んでからもう百年経ちます」
と称した。
そして、
忽詣陳氏宅、言是己旧宅、可見還、不爾焼汝。
忽ち陳氏の宅に詣(いた)り、言うに「これおのれの旧宅なり、還さるべし、しからずんば汝を焼かん」と。
突然、陳さんの家にやってきて、
「ここはわたしの生きていたときの家ですよ。返してくださいよ。そうしてくれないならあなたを焼きださないといけなくなる」
と言い出した。
陳氏は困惑したが、とりあえず追い返した。
と、数日後―――
火発蕩尽。
火発りて蕩尽す。
陳氏の家から火が出て、その家を焼きつくしてしまった。
人畜は早めに避難できて何の被害も無かったが、邸宅のあったところがまるまる焼野原になった。
そして火事の間にいったい誰がやりおおせたものか、
有鳥毛挿地繞宅周匝数重。
鳥毛の地に挿されて宅を繞りて周匝し、数重なるものあり。
宅地のまわりをぐるりと数周取り囲んで、鳥の羽毛が地面に挿されていたのである。
ナニモノかがここは自分の土地である、と明示したのであろう。
その後、謝聖公は二度とひとびとの前に姿を現さなかったが、
百姓乃起廟。
百姓すなわち廟を起こせり。
人民たちはお廟を立てて、聖公をお祀りすることにした。
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なんだそうです。南朝宋・劉敬叔「異苑」巻五より。
おいらも百年ぐらい休んでから戻って来ようかな。そのときはちゃんと返してくださいね、うっしっし。