平成27年7月12日(日)  目次へ  前回に戻る

「こんなの書いているヒマがあったら早く寝ればいいのに」「そうだニャア」

明日は月曜日。とりあえず今日は景気のいいの読んで風呂入って寝る。明日の朝になってからまた悩むことにする。

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頼山陽が伊丹の銘酒を何度も送ってくれた。そういえば以前、彼の九州紀行詩集である「西遊草」をもらったんだった。両方あわせてお礼替わりにこの詩を作る。

故人連寄酒幾瓻、  故人、連(しき)りに寄す、酒は幾瓻(ち)、

其酒勁烈如其詩。  その酒は勁烈にしてその詩の如し。

 我が友山陽外史が何度も送ってくれた、その酒はいく甕であったろうか。

 その酒の風味は強く激しく、まるでおまえさんの詩のようだ。

おまえさんの詩の力は雄大でクジラをもコントロールし、時流に乗ったこまごました技術的なことは唾を吐いて軽蔑している。わしが甘口の酒をいいやがって、女コドモの飲むようなものは呑めないと思っているのとおんなじだなあ。

おまえさんは去年、南の方、島国の果てを窮める旅をして、帰り道わしのところに土産替わりの詩集を置いて行った。わしはその詩巻を読んでその風景を想像し、ぼんやりとしておまえさんのあとについてそこまで行ったのだったかと思ったものだ(それほど詩が風景をよく描いていた)。

最想薩山縹渺裏、  最も想う、薩山縹渺の裏(うち)、

西望台冤南流鬼。  西に台冤(たいわん)を望み南には流鬼(りゅうき)あるを。

 特に想像を搔き立ててくれたのは、薩摩の山々のはるかな彼方に、

 西にタイワンの山影を、南にリュウキュウの島影を望むというところ。

そこでおまえさん(と、想像の世界で一緒にいるわし)は、

忽発広武英雄嘆、  忽ち発す、広武英雄の嘆、

嘆声驚立四海水。  嘆声は四海の水を驚き立たしめたり。

 思いがけずに、雄大な志を持つ英雄のようなためいきをついた。

 ためいきの声は、四方の海水を、びっくりさせ、湧き立たしめたほどだったのだ。

さてさて。

君不見鎮西源八郎、 君見ずや、鎮西の源八郎、

単身入海直龍驤。  単身海に入りてただち龍驤たり。

又不見飛蘭鄭大木、 また見ずや、飛蘭の鄭大木、

一剣撐天焚儒服。  一剣もて天を撐(ささ)えんとして儒服を焚く。

 みなさん、ご承知でしょう? 鎮西八郎・源為朝は、保元の乱に敗れたあと、一人伊豆の海中に流されたあと、龍のように飛び上がったことを。(彼は伊豆を支配し、さらに官軍に追われると琉球に入ってこれが王となったのだという。)

 また、ご承知でしょう? 飛蘭の鄭大木は、一本の剣だけを引っさげて、天下を支えようと、儒者の服を焼き棄てて軍事に随ったのを。

★さて、この「飛蘭の鄭大木」とは、何をしたどんな人なのでしょうか? 答えは明日。

これらのことは他国の歴史書にも載せられていることである。けれど、そういう冒険が出来るかどうかは、

有時有勢非可求。  時有り、勢有り、求むべきにあらず。

慨然連酌南蛮酒。  慨然として連酌せん、南蛮酒。

その時により、その勢いによるものであって、一人のひとの意志で求めたからといってどうなるものでもないのだ。

おまえさんは(薩摩で)深い感慨を持って、何度も何度も南蛮わたりの酒を呑みほしたことであろう。(わしもそうである。)

胸の中では軍隊の闘う音が聞こえ、ありあまる思いを詩に書きつけて一人読み直していたのであろう。

わしは今、おまえさんの詩を読んでいるのだが、

此日茅齋風雨晦、  この日、茅齋に風雨晦(くら)く、

繞村秧歌声細細。  村を繞る秧歌(おうか)は声細細。

今日はこの茅葺の粗末な庵は、風と雨にさらされて暗く、

村の外の水田の方からは、田植え唄がほそぼそと聞こえてくる。

酒を酌んでも、いろんなことを語り合い、この悶えを解く相手がどこにもいない。おまえさんも太平の世に生まれ、同じ思いであろう。

我飲君酒誦君詩、  我、君が酒を飲みて君が詩を誦し、

撃節不知碎玉壺。  撃節して、知らず、玉壺を碎きしを。

 わしはひとり、おまえさんからもらった酒を飲み、おまえさんの作った詩を口ずさみ、

 ああ、気づいたら、節をとろうと叩いていた玉の壺が砕けてしまっていた。

ガンガンと夢中に強くたたいていたから、というのです。

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菅茶山「頼子成連恵伊丹酒、前此見示西遊草、賦此併謝」(頼子成(らい・しせい)が連りに伊丹の酒を恵む、これよりさき、「西遊草」を示さる、これを賦して併せて謝す。)詩。

うーん。この詩を読んで景気付けにしようかと思ったが、鹿児島や沖縄や長崎行きたくなってきただけであった。夏なんだから休みたい〜。

 

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