(←役に立たないやつは役に立たないモノしか入手しないように)
もうイヤだー! こんなのムリ! シゴトなんか投げ出してしまいたいー!・・・と思っていると・・・
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宋の時代、江蘇・宝応の地でのことだそうですが、
民有以嫁娶会客者。酒半、客一人竟起出門。
民、嫁娶を以て客を会する者有り。酒半ばにして客一人ついに起(た)ちて門を出づ。
ある人民の家で、嫁取りの宴会を行っていた。宴会の途中で、お客の一人がふっと立ち上がり、門から出て行った。
「おい、あいつ大丈夫か?」
主人追之、客若酔甚将赴水者、主人急持之。
主人これを追うに、客、酔い甚だしくまさに水に赴かんとする者のごとく、主人これを急に持す。
その家のあるじ、心配して追いかけたところ、その客はひどく酔っぱらっており、近くの川に身を投げようとしたので、大急ぎでこれを捕まえて、家に連れ帰った。
みなで介抱するうちにようやく正気を取り戻したので、
「いったいどうしたのだ?」
と問いかけたところ、
婦人以詩招我。
婦人、詩を以て我を招けり。
「お、おんなのひとが〜、わしに詩をうたって招いたんじゃ〜」
と言うのである。
「こんな詩だったんじゃ〜・・・
長橋直下有蘭舟、 長橋直下に蘭舟有りて、
破月衝烟任意游。 月を破り烟を衝(つ)きて任意に游ぶ。
金玉満堂何所用、 金玉堂に満つるも何の用いるところぞや、
争如年少去来休。 いかでか年少の去来休(や)むが如からん。
大きな橋の真下に蘭の木で作った小舟があって、
月の光の降る下、靄の中を勝手気ままに移動している。(その舟で待ってますわ。)
黄金や宝玉が家にいっぱいあっても、何の役に立てようというのかしら、
若いひとのように希望を持ってじっと待っていることなんて、もうできないでしょうに。
そこで、
倉皇就之、不知其為水也。
倉皇これに就けり、その水たるを知らざるなり。
ふらふらとその女の誘いに乗ったのじゃ、まさか水中に飛び込もうとしていたとはなあ・・・」
「いやあ、あぶなかったなあ」
「祟られているのではないか」
とみな心配したのであった。
しかしその後、
客竟亦無他。
客ついにまた他無し。
その客人に、それ以上の変わったことは起こらなかった。
やはり、
夜会説鬼
夜、会して鬼を説く
夜、みなで集まって怪談ばなしをする
ようなことは戒めねばならない。そのようなことをすれば、どうしても禍ごとが引き寄せられてくるのだから。
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宋・蘇東坡「東坡志林」巻二より。
夜中にコワいこと話していると実際にコワいことが起こる―――ように、仕事がイヤだイヤだ、と言っていると、ホントにイヤな仕事ばかり起こるものです。だけど「わーい、シゴトがツラくてうれちいなあ」とにこにこできるはずもないではないか。ああイヤだイヤだ。