平成27年4月3日(金)  目次へ  前回に戻る

(←象だゾウ。)

おお。会社に来なくなった肝冷斎よ。いったい何処に行ってしまったのか。

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―――うっしっし。おいらはもうそちら側にはおりませんよ。もうこちらに来てしまいまちたからね。ああ、こちらはいいなあ。常春の愛すべき自然に囲まれ、好き放題に読書し、ごろごろしていられる。誰にも媚びる必要無く、「圧」を跳ね返すために自分を躁状態にする必要も無い。みなちゃんも早く来ればいいのになあ。

みなちゃんは、今ごろになっておいらの著作などをご覧になって、

観象迹超絶衆群、其所踴践倍復深広。

象迹(ぞうしゃく)の衆群に超絶し、その踴践するところますますにまた深広なるを観る。

たくさんの象の足跡の中に、ほかの象の足跡と比べて超絶してでかく、またその足跡が踏みつけたところが他にくらべて二倍も広く、また深いのがあるのを発見した。

としましょう。

それを見れば、

雖不覩其形、当知此象、身力必大。

その形を覩ずといえども、まさに此の象の身力必ず大ならんことを知るべし。

その象の本体は見てはいなくても、この象のからだや力が必ずほかに比べて巨大である、ということがわかった。

・・・ような思いでございまちょう。

また、

迅雷澍雨、能令鳥獣震死、百川奔湧、壊山襄陵。

迅雷澍雨のよく鳥獣をして震死し、百川をして奔湧せしめ、山を壊し陵(おか)に襄(のぼ)るあり。

疾風と雷鳴とともに激しい雨が降ったとき、それが多くの鳥やケモノを雷に撃たれて死なせ、百もの川をあふれ湧きかえらせ、山を壊し丘に逆流して昇るのを見た。

としましょう。

それを見れば、

雖不測其本、当知此龍威勢必大。

その本を測らずといえども、この龍の威勢必ず大ならんことを知るべし。

その雨を降らせる本体を目測できなくても、(この雷雨のもととなっている)竜の威力と勢力は必ずほかの龍に比べて巨大である、ということがわかった。

・・・ような思いでもございまちょう。

みなちゃんはそちら側で、「ああしまった、肝冷斎先生にあんなに冷たくせずに、もっといろいろ訊ねておくべきだったなあ」と後悔していることでちょうねえ。

え?

そんなことにさえ気づいてくれてない?

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唐・僧一行「大日経疏」「大日経」の解説書です)巻一より。

ただし、ここで使われている「象迹龍威」(象のあしあとを見てその大きさを知り、雷雨の烈しさを見て原因となっている龍の威力を知る)という比喩は、本来は、ニンゲンには如来の偉大さは理解できず、その遺した効果を見てはじめてその偉大さに気づくものだ、という比喩でございます。如来ならざる肝冷斎ごときの比喩に使うべきコトバではありませんでちたね。ごめんなちゃい。はげしく自己嫌悪いたちまちゅ。どこかに消えてしまいたい・・・。

 

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