平成27年2月27日(金)  目次へ  前回に戻る

(みんな祝福してる!・・・と思う?)

週末だからと婚活などに励んでいるみなさん、以下のような成功例もあるからガンバってねー。

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前漢の時代、四川出身の文人・司馬相如は長安に出、華美を嫌い節倹を宗とした景帝には容れられず文人を保護した梁王のもとに依ったのだが、梁王の死後ヒマを出されて郷里の成都に帰ってきたのであった。

才能と自信と美貌に恵まれた相如は、うらぶれた日々を過ごしながらも、

「おれほどのオトコが、このままで終わるはずがあるまいよ」

と何かいい伝手を求めていた。

おりしも成都郊外の臨邛の富豪・卓氏の邸で宴会が開かれるという。

「これは賭けてみる値打ちがあるかもな。どうせ外しても無一文に戻るだけだ・・・」

相如は旧知の臨邛令・王吉にもとでを借りて美々しい車を仕立て、その場に乗り込んだ。

時に

卓王孫有女文君新寡。

卓王孫に女・文君有りて新たに寡す。

卓氏の大旦那さまの御令嬢・文君さまは、つい先ごろ御主人に別れて家に帰ってきていた。

相如は、美しいと名高いこの出戻り娘の心を利用して、卓氏の富に食い込もうと考えたのである。

果たして、文君は、都帰りの凛々しい文人が来たというので、

竊於壁闌ゥ之。

竊(ひそ)かに壁閧ノこれを見る。

壁の隙間から、相如を盗み見した。

その熱い視線を十分に感じながら、相如は

以琴心挑之。

琴心を以てこれに挑む。

琴を奏でて思いを伝え、誘惑したのである。

―ーーこれが「琴歌」二首であります。

それでは、その効果は?

「漢書」司馬相如伝を按ずるに、

文君竊従戸窺、心悦而好之。

文君、戸より竊かに窺い、心に悦びてこれを好む。

文君は戸の陰から相如を盗み見、心とろけてそのトリコになってしまった。

度し難きは恋に堕ちた女心でありまする。

乃夜、亡奔相如。相如与馳帰成都。

乃夜、相如に亡奔す。相如、ともに成都に馳帰す。

その夜、文君は相如の泊まっている宿で忍び逢い、二人はそのまま成都に駆け落ちした。

ということで、この誘惑は大成功であった。(ただし、駆け落ちされた卓王孫は娘とその情夫に怒り心頭、絶縁して援助を与えなかったので、卓氏の財産を当てにした相如の策略は功を奏しなかった。それでは、というので二人はまた臨邛に立ち戻って新しいシゴトを始める・・・のですが、そのお話はまた次の機会にいたしましょう。)

さて、その女心を蕩かした名曲・琴歌、どうぞお聴きください!

鳳兮鳳兮帰故郷。 鳳よ鳳よ、故郷に帰る。 

邀遊四海求其凰、 四海を邀遊してその凰を求むも、

時未遇兮無所将。 時にいまだ遇わず、将いるところ無し。

何悟今夕升斯堂。 何ぞ悟らんや、今夕この堂に升らんとは。

 おおとりは、おおとりは、ふるさとに帰ってきた。

 四方の海まで遠く旅して、そのつれあいの鳥を探し求めたのだが、

 どうやらまだその定めの時の至らぬらしく、どこにもその人はいなかった。

 どうして今宵、この部屋にやってくる日が来るなどと予想していただろうか。

(やってきたこの部屋(堂)こそ、運命の場所だったのだよ!)

有豔淑女在閨房、 豔(えん)たる淑女の閨房に在りて、

室邇人遐毒我腸。 室は邇(ちか)きも人は遐(とお)く、我が腸(はらわた)を毒す。

何縁交頸為鴛鴦、 何に縁りては交頸して鴛鴦と為り、

胡頡頏兮共翺翔。 なんぞ頡頏(きっこう)し、ともに翺翔(こうしょう)せん。

 あでやかな優しいひとが、女部屋にいるらしい。

 その部屋はすぐ近くなのに、その人のところにはたどり着けないことが、おれのはらわたを痛めつける(ほど辛いぜ)。

どうすればその人とくびをからめつけ合うオシドリのようになって、

ともに飛び上がり、ともに高く翔けりあうことができるんだろうか。

(おまえのことを言うているのだよ!)

以上が第一首です。

第二首は疲れたので、また次回。

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宋・郭茂倩編「楽府詩集」巻六十より。

むかしからこんなやつら(男女とも)ばかりがハバを利かせる世の中なのだなあ。

 

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