(新年です。ウメの季節)
少しあたたかくなってきたように感ずる。ウメはもう咲いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
宋代のことです。
建安のひと黄正之の兄・行之は、商用で旅に出ているうちに方臘の乱(1120〜21)に巻き込まれ、
為賊所害。
賊の害するところと為る。
テロリストどもに殺害されてしまった。
乱が治まってから、正之はもともと道教を信仰していたので、道士や村人を集めて大いに法会を催し、
追薦殺賊之衆、倶有報応。
殺賊の衆を追薦し、ともに報応する有り。
テロリストたちに殺された者を追善して、兄だけでなく多くのひとびとを供養した。
その晩、正之の夢に兄の行之が現われ、告げて言うに、
我以罵賊不屈而死、上帝見賞、已補仙職矣。爾無憂也。
我、賊を罵しり屈せずして死するを以て、上帝に賞せられ、すでに仙職に補されたり。なんじ、憂うる無かれ。
「わしはテロリストたちの不義を唱え、彼等に協力することなく殺されたのじゃ。そのことを天帝さまにおみとめいただき、賞としてすでに仙界の官職に就かせていただいている。おまえが追善供養などをして心配するには及ばぬぞ」
と。
ああ。
凡世人至忠至孝及貞廉之士、与夫有一善可録者、死有所補授如花木之神、井泉之監。不可不知也。
およそ世人の至忠至孝及び貞廉の士と、夫(か)の一善の録すべき有る者とは、死して補授するところ、花木の神、井泉の監の如き有り。知らざるべからざるなり。
世の中の忠義に篤いひと、孝行者、正義清廉の士、それとこのひとのように一つでも認められるべき立派な行為を行った者、これらのひとたちは、死後、花や木の守り神や井戸や水場の守護者のように、何等かの仙界の官職を授けられるものなのだ。みなさん、よく知っておかれるとよい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
宋・韓青老農・何子遠「春渚紀聞」巻四より。花の守り神もそろそろお忙しいことでありましょう。(なお同じ「春渚紀聞」に「花月神」もいるよ)
それにしても、いいことをして死ぬと「官職」がもらえるよ〜、というのですから、「官職」というのがいかにもおいしいモノ、だったんでしょうね。