ぐつぐつぐつ・・・どぶん。今日も釜ゆで熱かった。
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さて、月またぎで、昨日の続きでございます。
不思議な術の持ち主であった後漢の葉県令・王喬ですが、ある日、
天下玉棺於堂前。
天、玉棺を堂前に下す。
空から、玉で飾った棺が葉県の役場の正堂の前に降りてきた。
「なんじゃこれは。怪しからん」
吏人推排、終不揺動。
吏人推排するも、ついに揺動せず。
官吏たちが押しのけようとしたが、微動だにしない。
しばらくして王喬が出てきて、この棺を見た。
そして嘆息し、
天帝独召我邪。
天帝、ひとり我を召すか。
「天帝さまがお呼びなのは、このわし一人のようじゃなあ」
と言いまして、
沐浴服飾、寝其中、蓋便立覆。
沐浴・服飾してその中に寝るに、蓋、すなわち立ちどころに覆えり。
風呂へ入って身を清め、立派な盛装をして、その棺の中に入って横になった―――その途端、ぱたん、と、あっという間に棺のふたが自動的に閉まってしまったのであった。
「県令さまが閉じ込められてしまったぞ」
まわりの人たちが蓋をこじあけようとしても少しの隙間もできない。
「開かないのではしようがないのう」
「怪しからんけどどうしようもないのう」
しかたがないので、
宿昔葬於城東、土自成墳。
宿昔、城東に葬るに、土おのずから墳を成す。
二日隔てて、町の東の郊外に葬った。すると、棺を埋めた上の土が自然に盛り上がって、塚になった。
この夕べ、県内の牛という牛がすべて汗を流し、舌を出して喘いでいたが、そのことに気づいたひとは稀であった、という。
後、
百姓乃立廟号葉君祠。
百姓すなわち廟を立てて、葉君祠と号す。
人民たちは彼を記念したおたまやを建てて、そこを「葉県の主のほこら」と呼んだ。
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「後漢書」巻112上・方術伝より。このひと、空は飛べるのに、わざわざ棺に入ってどこかに行ってしまったのであった。
・・・この話を書いている途中に、親類が亡くなったと報らせがありました。頭を低れて憶う、わたしはこんなことをしながら日々を過ごしていていいのだろうか、と。