平成26年9月7日(日)  目次へ  前回に戻る

月に宜(よろ)しきは?

日曜日でした。ああ楽しかったなあ。

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明日は中秋の明月らしいので、月につきまして。

月宜寒潭、宜絶壁、宜高閣、宜平台、宜牕紗、宜簾鈎、宜苔階、宜花砌、宜小酌、宜清談、宜長嘯、宜独往、宜搔首、宜促膝。

月は、寒潭(かんたん)によろしく、絶壁によろしく、高閣によろしく、平台によろしく、牕紗(そうさ)によろしく、簾鈎(れんこう)によろしく、苔階(たいかい)によろしく、花砌(かぜい)によろしく、小酌によろしく、清談によろしく、長嘯によろしく、独り往くによろしく、首(こうべ)を搔くによろしく、膝を促(すす)むるによろし。

月は―――、

冷え冷えとした淵によく似合う。

壁のように落ちる嶮しい崖によく似合う。

高い楼閣によく似合う。

平たい展望台によく似合う。

まどにかけられた薄絹のカーテンによく似合う。

すだれをあげて懸けておくためのカギによく似合う。

苔むしたきざはしによく似合う。

花の植えられたみぎりによく似合う。

軽くお酒を飲むのにふさわしい。

世俗を離れた哲学的な会話をするのにふさわしい。

長ながと吹かれる口笛を聴くのにふさわしい。

ひとりその下を行くのにふさわしい。

その下で(悩んで)頭を掻いているのにふさわしい。

膝をつきあわせて語り合うのにふさわしい。

そして、

春月宜尊罍、夏月宜枕簟、秋月宜砧杵、冬月宜図書。

春月は尊罍(そんらい)によろしく、夏月は枕簟(ちんてん)によろしく、秋月は砧杵(ちんしょ)によろしく、冬の月は図書(ずしょ)によろし。

春の月は、古い青銅器の雷の模様の入った酒壺とさかずきで、酌み交わすときに見上げるのにふさわしい。

夏の月は、竹を編んだ枕にごろりと横になって見上げるのにふさわしい。

秋の月は、(旅に出た夫を思って、若妻が)衣の光沢を出すためにキヌタで布を打つ、その音を聴きながら見上げるのにふさわしい。

冬の月は、ひとり書庫から出してきた、古代の地図と書物を読み解きながら見上げるのにふさわしい。

のだそうです。また、

楼月宜簫、江月宜笛、寺院月宜笙、書斎月宜琴、

楼月は簫(しょう)によろしく、江月は笛によろしく、寺院の月は笙(しょう)によろしく、書斎の月は琴によろし。

たかどので月を見るときには、縦笛の音が似つかわしい。

川の上に出た月を見るときには、横笛の音が似つかわしい。

お寺で月を見るときには、短笛の音が似つかわしい。

書斎で月を見るときには、琴の音が似つかわしい。

さらに、

閨闈月宜紗厨、勾欄月宜絃索、関山月宜帆檣、沙場月宜刁斗。

閨闈(けいい)の月は紗厨(さちゅう)によろしく、勾欄(こうらん)の月は絃索(げんさく)によろしく、関山の月は帆檣(はんしょう)によろしく、沙場(さじょう)の月は刁斗(ちょうと)によろし。

奥まった寝室に差し込む月は、ベッドにかけられた蚊帳の中で見るべきもの。(「紗厨」は「蚊帳」のこと)

曲りひねった欄干の向こうの月は、(琵琶などの)弦をつまびきながら見るべきもの。

関所のある山にかかった月は、(その麓の船の上から)帆柱の向こうに見るべきもの。

ゴビの砂漠の上の月は、糧食用の「さじ」と「ます」(スプーンとカップ)を手にして見るべきもの。

・・・ここまでで26「宜」。まだ続きますが、かなり疲れてきた。よく考えてみると明日が中秋の名月なので、今日で終わらせる必要も無い気がしてきましたので、明日に続く。

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明・陸紹珩「酔古堂剣掃」巻十二より。

ちなみに昨日申し上げたとおり、デング熱の可能性もわずかながらある状態です。明日は出勤は難しいカモ。

 

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