月に宜(よろ)しきは?
日曜日でした。ああ楽しかったなあ。
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明日は中秋の明月らしいので、月につきまして。
月宜寒潭、宜絶壁、宜高閣、宜平台、宜牕紗、宜簾鈎、宜苔階、宜花砌、宜小酌、宜清談、宜長嘯、宜独往、宜搔首、宜促膝。
月は、寒潭(かんたん)によろしく、絶壁によろしく、高閣によろしく、平台によろしく、牕紗(そうさ)によろしく、簾鈎(れんこう)によろしく、苔階(たいかい)によろしく、花砌(かぜい)によろしく、小酌によろしく、清談によろしく、長嘯によろしく、独り往くによろしく、首(こうべ)を搔くによろしく、膝を促(すす)むるによろし。
月は―――、
冷え冷えとした淵によく似合う。
壁のように落ちる嶮しい崖によく似合う。
高い楼閣によく似合う。
平たい展望台によく似合う。
まどにかけられた薄絹のカーテンによく似合う。
すだれをあげて懸けておくためのカギによく似合う。
苔むしたきざはしによく似合う。
花の植えられたみぎりによく似合う。
軽くお酒を飲むのにふさわしい。
世俗を離れた哲学的な会話をするのにふさわしい。
長ながと吹かれる口笛を聴くのにふさわしい。
ひとりその下を行くのにふさわしい。
その下で(悩んで)頭を掻いているのにふさわしい。
膝をつきあわせて語り合うのにふさわしい。
そして、
春月宜尊罍、夏月宜枕簟、秋月宜砧杵、冬月宜図書。
春月は尊罍(そんらい)によろしく、夏月は枕簟(ちんてん)によろしく、秋月は砧杵(ちんしょ)によろしく、冬の月は図書(ずしょ)によろし。
春の月は、古い青銅器の雷の模様の入った酒壺とさかずきで、酌み交わすときに見上げるのにふさわしい。
夏の月は、竹を編んだ枕にごろりと横になって見上げるのにふさわしい。
秋の月は、(旅に出た夫を思って、若妻が)衣の光沢を出すためにキヌタで布を打つ、その音を聴きながら見上げるのにふさわしい。
冬の月は、ひとり書庫から出してきた、古代の地図と書物を読み解きながら見上げるのにふさわしい。
のだそうです。また、
楼月宜簫、江月宜笛、寺院月宜笙、書斎月宜琴、
楼月は簫(しょう)によろしく、江月は笛によろしく、寺院の月は笙(しょう)によろしく、書斎の月は琴によろし。
たかどので月を見るときには、縦笛の音が似つかわしい。
川の上に出た月を見るときには、横笛の音が似つかわしい。
お寺で月を見るときには、短笛の音が似つかわしい。
書斎で月を見るときには、琴の音が似つかわしい。
さらに、
閨闈月宜紗厨、勾欄月宜絃索、関山月宜帆檣、沙場月宜刁斗。
閨闈(けいい)の月は紗厨(さちゅう)によろしく、勾欄(こうらん)の月は絃索(げんさく)によろしく、関山の月は帆檣(はんしょう)によろしく、沙場(さじょう)の月は刁斗(ちょうと)によろし。
奥まった寝室に差し込む月は、ベッドにかけられた蚊帳の中で見るべきもの。(「紗厨」は「蚊帳」のこと)
曲りひねった欄干の向こうの月は、(琵琶などの)弦をつまびきながら見るべきもの。
関所のある山にかかった月は、(その麓の船の上から)帆柱の向こうに見るべきもの。
ゴビの砂漠の上の月は、糧食用の「さじ」と「ます」(スプーンとカップ)を手にして見るべきもの。
・・・ここまでで26「宜」。まだ続きますが、かなり疲れてきた。よく考えてみると明日が中秋の名月なので、今日で終わらせる必要も無い気がしてきましたので、明日に続く。
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明・陸紹珩「酔古堂剣掃」巻十二より。
ちなみに昨日申し上げたとおり、デング熱の可能性もわずかながらある状態です。明日は出勤は難しいカモ。