←ぶうすか。寝ている間にすべてが過ぎていかないものか。
三日前の夜には「もう二度と来ないのではないか」とタカをくくっていた平日がまた来る。今週は四日・・・。
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唐の末のころ。
福建に処士(仕えないでいるひと)・張摽という者がいた。
たいへん不思議なひとで、
三日五日臥如死而体不冷。
三日五日、臥して死するが如きも体は冷えず。
三日から五日ぐらいずっと死んだように眠っていることがあった。呼吸もしないのだが、体は温かいままである。
お。「三日から五日」ということは、平均すると四日である。明日から金曜日までと一緒だぞ。
既蘇、多説冥中事、或言未来。
既に蘇りて、多く冥中の事を説き、あるいは未だ来たらざるを言う。
息をふきかえすと、死者の世界のことをたくさんしゃべりだすのであった。また、未来のことを予言することもしばしばあった。
彼の言うことは死者と近親の者しか知らないようなことも多く、また未来のことは特によく的中する、というので評判であった。
20世紀の「眠れる大予言者」エドガー=ケイシーに極めて類似したタイプの能力者であったようです。
さて、そのころの福建の総督・王保宜将軍は、忠義に篤いひとで、反乱軍があちこちに現れて陸路での連絡がつかなくなった都・長安に上京しようとして、考えた挙句に
「そうだ!」
乃泛海。
すなわち海に泛ぶ。
とばかりに、東シナ海まわりで華北に行こうとした。
しかし残念ながら途上で船が転覆し、
因溺死。
因りて溺死す。
ために溺れ死んでしまったのであった。
王保宜の孫にあたる王侃が、留守職としてその後も福建に残って勢力を保持していたが、王侃はあるとき、
因家人疾、請摽禱於冥府。
家人の疾により、摽に冥府に禱らんことを請う。
親族が病に臥したので、張摽に
「あの世に行っていただいて、しかるべき官位のひとに病気の治癒をお願いしていただけまいか」
と依頼した。
「よろしうございます」
張摽はこれを請け合った。
・・・数日すると張摽は王家にやってきた。
たいへんにこやかに言うには、
君之先父在水府、有冥職。
君の先父、水府に在りて冥職有り。
「あなたの御祖父ぎみは、あの世の水中の宮で高位にお就きでいらっしゃいました。
そこで今回の件は御祖父ぎみにお願いしてまいった次第」
そこでいろいろと確認してみると、
其家事委曲、一一皆是。
その家事の委曲、一いちみな是なり。
家の中のことについて、いろいろと詳しく聞いてきたとのことで、訊ねたことには(家人にしかわからないはずのことまで)みな正しく答えたのであった。
このため、王侃もその「ホンモノ」であることを確信した、ということである。
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宋・呉淑「江淮異人録」より。
あちら側とこちら側とはそれほど遠く離れてはいない、というのは知れたことですが、なかなか行き来はしづらい。その間を眠っている間に往来できる、というこのひとは非常に便利なひとであったと申せましょう。
明日から平日になりますが、わたくしも三日から五日ぐらい家の中で寝ていようと思います。明日から暑いらしいし。
職場のひとたちは、
「そうか、肝冷斎はあの世に行っているのか。次に覚めたらあの世の情報を齎してくれるだろう」
と楽しみにして放っておいてくれるに相違なく、よもや「サボっている?」などとは考えたりはいたしますまい。