平成26年7月17日(木)  目次へ  前回に戻る

 

ほんとに眠い。でもまあ明日は休みだから・・・と思って帰宅したが、なんと明日はまだ金曜日。明日も会社だったー!

昨日に続いて鳥のお話をいたします。

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「鵶」(あ)というのは「カラス」のこと。特に大きめのものをいうらしい。(→参考                                            

晩唐の咸通年間(860〜873)のころ、温璋という京兆尹(首都長官)がいた。その法を持すること峻厳でひとびとこれを畏れること甚だしかった。

一日、聞挽鈴而不見有人。如此者三。

一日、挽鈴を聞きて人の有るを見ず。かくの如きもの三。

ある日、訴訟をしようとする者が鳴らす鈴を、紐を引いて鳴らす者があったので、表に出たがニンゲンの姿が見えない。「いったいナニモノのしわざであろうか」と思いながら席に戻ると、また鈴を鳴らす音がする。そんなことが三度まで続いた。

三度めによくよく見ると、

乃一鵶也。

すなわち一鵶なり。

一羽のカラスがいて、紐をくちばしに咥えて引っ張っていたのである。

「ほほう、カラスであったか・・・」

温璋はカラスを見てしばらく腕組みして考えこんでいた。

「カラスがいったい何を訴えにやってきたのか・・・」

やがて部下の警吏を呼び寄せると、

「そのカラスを捕らえてみよ」

と命じた。

「はッ」

警吏は命じられるままカラスを捕らえようとしたが、カラスはすっと身をかわして逃げる。

「よし、そのままカラスを追いたて、その行先にいる者を捕らえてまいれ!」

「は・・・ははあっ」

警吏はカラスを追いかけた。

其鵶盤旋、引吏至城外樹間。

その鵶、盤旋して、吏を引きて城外の樹間に至る。

カラスはぐるりぐるりとめぐりながら、警吏を引きつけて、町の外の林に至った。

すると、

果有人探其雛、尚憩樹下。

果たして人のその雛を探る有りて、なお樹下に憩えり。

はたしてカラスの巣からヒナを盗み取って(ヤキトリなどの原料にする)鳥追い人がいて、まだ巣のある木の下で一休みしていたのである。

その籠には、ヒナが数羽、ピイピイと鳴いている。

「逮捕する!」

吏執送之。

吏これを執送す。

警吏は鳥追い人を逮捕して連行した。

「あわわ、わたしはただの鳥追い人です。なんで逮捕されるの?」

「府尹(首都長官)さまの前で申し開きせよ」

鳥追いは温璋の前に引きだされ、自分は鳥のヒナを獲るのを商売としており、しごとをしていただけである、と主張した。

温璋、その主張を聴き、いちいち頷いて、

「まことにおまえの主張はいちいちもっともである」

と認めたが、

「が、しかし、今回はカラスが人を訴える、というどう考えても異常なことが起こった。

以事異於常。

事を以て、常に異なれり。

あまりにも異常な事件である。

異常な事件を裁くには異常な判決が行われなければならぬ」

すなわちこの鳥追い人をニンゲンの人さらいと同様に、死罪に処したのであった。

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五代・孫光憲「北夢瑣言」より。法治主義の道はまだまだ遠いようです。おいらは風呂入って寝ます。明日が来るので・・・(T_T)

なおこの温璋さまは、後に皇帝に奉った意見書があまりに非礼であるというので辺地に送られ、ついに毒杯を仰いで自死したという(「旧唐書」)。

 

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