今日は長い会議あり、特に疲れました。週末まで、あと一日。24時間ぐらい・・・。
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ゲンダイは一日24時間ですが、むかしは一日は十二刻、「刻」は「時」とも数えましたので、一日=十二時でありました。
さて、南海―――南シナ海の彼方―――に、トカゲに似たかっこうでそれよりも大きい、ある種の有毒ドウブツがおります。目のぎらぎらと煌めいているのが特徴の一つであるそうですが、このドウブツのことを、
土人呼為十二時虫。
土人呼びて十二時虫と為す。
土地の人民たちは、「十二時のドウブツ」と呼んでいる。
何故にそう呼ばれるのか。
一日一夜、随十二時変其色。乍赤乍黄。
一日一夜、十二時に随いてその色を変ず。たちまち赤、たちまち黄なり。
一昼夜の間、十二の時が移るのにしたがって、その体色を変化させ、あるときは赤色をしていたかと思えばすぐに黄色に変化するのである。
これはカメレオン?
いや、カメレオンではなさそうだぞ。
亦呼為籬頭虫。
また呼びて、「籬頭」(りとう)虫と為す。
別名があって、「まがきの上にいるドウブツ」という。
何故にそう呼ばれるのか。
このドウブツ、たいへんな毒を持っている。その毒の強さたるや、ニンゲンならば一咬みしただけでたちどころに死んでしまうほどである。そして、
潜噬人、急走於藩籬之上、望其死者親族之哭。
潜(ひそ)かに人を噬(か)み、急に藩籬の上に走りて、その死者の親族の哭するを望むなり。
人家の庭などに隠れ潜んで狙うところの人を咬む。ひと咬みすると、大急ぎで土塀やまがきの上に駈け昇る。その間にはもう咬まれたひとは死んでしまい、こいつは塀の上から死者の家族が遺骸を囲んで泣き叫んでいるのを、見下ろしているからだ。
ぎらぎらと煌めく爬虫類特有の無表情な目で、じっと見下ろしているのだそうである。
カメレオンはこんな陰険なことはしないはず・・・ですよね?
ところで、わたし(←肝稗道人にあらず、唐のひと房千里)は南方に十年ほど飛ばされていましたが、その間、とうとうヘビと、蚊・ハエを見なかった。
盛夏露臥、無咬膚之苦。
盛夏に露臥するも、咬膚の苦無し。
真夏にはだかで寝ていても、肌をかまれる苦しみを味わうことはなかった。
ひとのいうところでは、
南方少虵。以為夷獠所食。
南方には虵(だ)少なし。以て夷獠の食らうところと為るなり。
「虵」(だ)はヘビ。
南方にはヘビの数が少ない。これは、少数民族の獠族が食べてしまうからである。
ほかに「水虵」という水棲のヘビもいるが、これは毒は持っていない云々・・・。
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さすがに現地に長くいた人の言葉は重みがありますね。
唐・房千里「投荒雑録」より。筆者の房千里がどんなひとかよくわかりませんが、「投荒」というのは辺地に竄せられることをいいますので、南方に飛ばされたひとらしい。そのひとが飛ばされている間の見聞をメモした本。その書は既に佚し、「太平廣記」等に引用された数条が残るのみであるという(本条は巻478に所収)。
ということで、あと十二時虫がひとまわり色を変えれば、週末なのだ。そのときを夢見て、生きよう。可能ならば。