昨日は気力萎えて更新できませんでしたのじゃ。今日は木曜日・・・あと一日、最後の力を振り絞って・・・。
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五代・四川地方でのこと。
民有於蜀江之上、獲巨鼈者。
民、蜀江の上にて巨鼈を獲る者有し。
あるひと、蜀江のほとりで巨大なすっぽんを捕まえた。
どれぐらい巨大かといいますと、
大於常、長尺余。
常より大にして長さ尺余なり。
ちょっと無いぐらい大きく、体長は50センチぐらいもあろうという大きさなのである。
しかもこのすっぽん、
其裙朱色。
その裙、朱色なり。
「裙」はスカートのこと。すっぽんの甲羅から下の部分をいうのであろう。
腹の側は赤い。
という珍しいすっぽんである。しかし珍しかろうがなんだろうがチュウゴク的にはすっぽんは食べ物である。(参考)
これだけ大きいので、捕まえたひとは
「これは食いでがあるぞ、うっしっしー」
と喜んだ。
早速家に帰って湯を沸かし、ぐらぐらのナベの中にすっぽんを放り込んだ。
ところが―――
鍋中煮之経宿、遊戯自若。
鍋中これを煮ること経宿なるも、遊戯自若たり。
ナベの中でぐつぐつと一晩中煮こみ続けたが、すっぽんは自由自在に元気に泳ぎ回っているのであった。
「むむむ・・・」
又加火一日、水涸而鼈不死。
また火を加うること一日、水涸るれども鼈死せず。
さらに火力を強くしてもう一日煮立てたが、とうとう水はすべて蒸発してしまったのに、すっぽんの方はぴんぴんしているのである。
「うひゃあ、すごいすっぽん・・・いや、すっぽん様じゃ」
挙家驚懼、以為龍類也、乃投於江中。
挙家驚き懼れ、以て「龍類ならん」と為し、すなわち江中に投ず。
家中みな驚き畏れて、「おまえさん、このすっぽんは龍の一族なのではないかねえ」と言い出して、とにかく蜀江に放すことにした。
江のほとりからすっぽん様を投げ込むと、
どぶん。
と一度沈んでから浮かび上がり、そのまま
浮泛而去、不復見矣。
浮き泛(うか)びて去りて、また見えず。
ぷかぷか浮かんで遠く去って行き、二度とあらわれることはなかった。
そうでございます。
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五代・杜光庭「録異記」巻五より。
ありがたや、すっぽん様! おいらもすっぽん様にあやかってすごい生命力で、あと一日だけナベの中で煮られるような日を生き抜けば、
「うっしっし、週末でーちゅ!」(どぶん。)
と一度沈んでから浮きあがり、ぷかぷか泛んでどこかに去り、今週こそ二度とみなさんの前にすがたを見せることがなくなるであろう。