平成26年4月7日(月)  目次へ  前回に戻る

 

今日は会社に行きました。明日からはどうしようかなあ・・・。

・・・そうだ、迷いがあるときはお師匠さまにお訊ねしてみよう!

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ということで、今夜はお寺に来ました。・・・ここは唐の末ごろの、河北のどこかのお寺。

師示衆云、老僧今夜答話去也。解問者出来。

師、衆に示して云う、「老僧は今夜、答話し去らん。解問者、出で来たれ」と。

お師匠さまがみんなに向かっておっしゃった。

「わしは今夜、大いに答えてやろうと思う。質問のできる者は出て来い」

そこで、

有僧纔出礼拝。

僧の纔(わず)かに出でて礼拝する有り。

とある僧侶が前に出て、礼拝しかけた。

礼拝してから質問しようとしたのである。

するとお師匠さま、

比来、抛磚引玉、只得箇墼子。

比来(このごろ)、磚(かわら)を抛うちて玉を引かんとするに、只この墼子(げきし)を得たり。

「今日のところは、レンガのようなやつらを放り出して玉のようなやつらを見出そうと思ったのに、まだ焼いてないレンガが出てきおったわい」

礼拝するヒマがあるのではまだまだ、真摯に道を求めるならそんなことをする前に攫みかかるように問うべきであろう・・・というダメ出しかな?

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こんなことで挫けてはいけませんので、質問します。

問、朗月当空時、如何。

問う、朗月の空に当たるの時、如何。

「質問いたちまっちゅ。明るい月が真正面の空にかかっているような、そんなときはどんなものでしょうか(真理を感得した、と言ってもいいでしょうか)」

師云闍梨名什麼。

師云う、闍梨(じゃり)、什麼(じゅうも)と名づくる。

「闍梨」(じゃり)は、「阿闍梨」の略で「僧侶」のこと。ここでは相手への呼びかけである。「什麼」(シナ音で「シェンマ」)は「何?」「what」の意。

お師匠さまは言った。

「はあ。御坊、お名前は何とおっしゃる?」

学云、某甲。

学云う、某甲なり。

修行僧は言うた、「ナニガシと申しまっちゅ」

すると、お師匠、

朗月当空、在什麼処。

朗月空に当たるに、什麼の処にか在る。

「明るい月が真正面の空にかかっていたとき、そのナニガシはどこにおった?」

空に当たった朗月と、それを真正面に見ている自分と、という区別がある限り、真理を感得しているはずはないであろう、とダメ出し。

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また問う。

正当二八時如何。

まさに二八の時に当たりては如何。

二八=十六です。「二八」というのは七月十六日をいいます。この日は、三か月に及ぶ「夏安居」(げあんご)が解かれ、修行僧たちがひと夏の間集住していたお寺を離れ、「雲水」として旅に出ることになる、卒業式みたいな日である。質問者はおそらく、これに死後のことを掛けて訊いている。

「七月十六日に新たな修行に出ようというときにはみな出かけていきます。(われらは死んだら)どこに行くのでしょうか」

お師匠云う、

東東西西。

東せんとするは東し、西せんとするは西す。

「東に行きたいやつは東に行くんじゃ。西に行きたいやつは西に行くんじゃ」

今度のバスで行くのでしょう。

質問、

如何是東東西西。

如何ぞこれ東せんとするは東し、西せんとする西するや。

「東に行きたいやつは東に行き、西に行きたいやつは西に行く、とはどういうことでしょうか。どこへ行くのですか」

師匠、

覓不著。

覓(もと)むるも著(あきらか)ならず。

「そんなことわからん」

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う〜ん。

学人全不会時如何。

学人すべて会(え)せざるの時、如何。

「修行者であるわたくしには、何が何だかなにごともわかりません。どうしましょう」

師匠、

我更不会。

我さらに会せず。

「わしはもっとわからんのだぞ」

問う、

和尚還知有也無。

和尚、また有るを知るや無きや。

「お師匠さまでも、モノが存在しているなあ、というのは認識しているのですか、それとももうまったく空っぽなのですか」

師匠、

我不是木頭、作麼不知。

我はこれ木頭ならず、作麼(そも)知らざらんや。

「作麼」は「いかんぞ」と訓じる。

「わしは木切れでは無いのじゃから、どうして認識しないことがあろうか」

云う、

大好不会。

大いに好く会せざるなり。

「ずいぶん都合のいい「わからん」なのですね」

お師匠、

「わっはっはっは」

拍掌笑之。

掌を拍ちてこれを笑う。

手を叩いて大笑いした。

―――と、ご機嫌になったところで、これ以上質問してまた怒らせるといかんので、今日はここまでにいたしまっちゅ。

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「趙州録」巻上より。禅問答だからわかったようなわからんようなコンニャクのような感じですね。

 

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