3月31日に長生きのオオカミについて、昨日は長生きのニンゲンについて述べました。今日は長生きの樹木につきまして述べます。
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千歳樹精為青羊。
千歳の樹精は青羊と為る。
千年を経た木の精霊は、青いヒツジの姿となる。
そうです。
では、一万年経るとどうでしょうか。
万歳樹精為青牛、出遊人間。
万歳の樹精は青牛と為り、人間(じんかん)に出遊す。
一万年を経た木の精霊は、青いウシの姿となり、よく人間世界に出てきてうろついている。
のだそうです。
老子の車を牽いていた青いウシもその類だったのでしょう。
後漢の桓帝(在位146〜167)の時代、帝が黄河のほとりに巡遊あそばしたとき、
忽有一青牛、従河中出。人驚走。
たちまち一青牛有りて、河中より出づ。人、驚走せり。
突然、一頭の青いウシが河の中から出てきたので、帝に供奉するひとびとは慌てふためき、大騒ぎになった。
時に中尉であった何将軍、勇力あり。彼が駆け付けると、
牛見公、走還河。
牛、公を見て走りて河に還らんとす。
ウシは将軍の姿を見るなり河の中に逃げ帰ろうとした。
だが、
「逃がさぬぞ!」
公以左手挽牛足、右手持斧、斫牛頭。
公、左手を以て牛の足を挽き、右手に斧を持して、牛の頭を斫る。
将軍は左手でムンズとウシの足を捕まえ、右手に持った斧で、ウシの頭に斬りつけた!
ごろん。
ウシの頭はころりと落ちた―――かと思ったら、
ぼよよよ〜ん
と木のコブに変わり、何将軍の左手には老木の幹が残っていたのだ。
すなわち、
此青牛者万年之木也。
この青牛なるものは万年の木なり。
この青いウシは、一万年を経た木だった、というわけ。
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「玄中記」より(「太平御覧」巻900所収)。同書は六朝期に成立した書物で、四方の神異のことを記す。今は佚した。著者は郭某だという説もあるが、魯迅はそれさえ仮託であろうという(「中国小説史略」)。
一万年の木は地球上にあんまり無いので、もったいないように思います。クジラよりも。