雨降って春になってきました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
春になると虫が出てくる。「斉女」というのは虫の一種、セミのことであるという。
問、蝉曰斉女、何也。
問う、蝉を斉女と曰うは何ぞや。
質問です。セミのことを「斉の女」というのは何故ですか。
答えて言う、
―――よい質問じゃ。
昔斉后忿而死。
昔、斉后、忿(いか)りて死す。
むかしむかし、春秋の時代、斉の国のお妃さまが王さまにふくむところがあり、恨み憤って死んでしまったのじゃ。
尸変為蝉。
尸変じて蝉と為れり。
その死体、しばらくするとセミに変化した。
そして、
登庭樹嘒唳而鳴。
庭樹に登りて嘒唳(けいれい)として鳴く。
「嘒唳」はセミの鳴き声の形容。なんとなく「カナカナ」ではないかと思います。
そのセミは庭の木に登り、カナカナと悲しく鳴いた。
晩夏の夕べに鳴くその声を聞きながら、
王悔恨。
王、悔恨す。
王さま、お妃に冷たく当たったことを大いに後悔した。
以来、
世名蝉為斉女焉。
世に蝉を名づけて斉女と為すなり。
世間ではセミのことを「斉の女」というようになったのである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そうだったんですか。勉強になった。五代・馬縞「中華古今注」巻下より。