平成26年3月13日(木)  目次へ  前回に戻る

 

雨降って春になってきました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

春になると虫が出てくる。「斉女」というのは虫の一種、セミのことであるという。

問、蝉曰斉女、何也。

問う、蝉を斉女と曰うは何ぞや。

質問です。セミのことを「斉の女」というのは何故ですか。

答えて言う、

―――よい質問じゃ。

昔斉后忿而死。

昔、斉后、忿(いか)りて死す。

むかしむかし、春秋の時代、斉の国のお妃さまが王さまにふくむところがあり、恨み憤って死んでしまったのじゃ。

尸変為蝉。

尸変じて蝉と為れり。

その死体、しばらくするとセミに変化した。

そして、

登庭樹嘒唳而鳴。

庭樹に登りて嘒唳(けいれい)として鳴く。

「嘒唳」はセミの鳴き声の形容。なんとなく「カナカナ」ではないかと思います。

そのセミは庭の木に登り、カナカナと悲しく鳴いた。

晩夏の夕べに鳴くその声を聞きながら、

王悔恨。

王、悔恨す。

王さま、お妃に冷たく当たったことを大いに後悔した。

以来、

世名蝉為斉女焉。

世に蝉を名づけて斉女と為すなり。

世間ではセミのことを「斉の女」というようになったのである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そうだったんですか。勉強になった。五代・馬縞「中華古今注」巻下より。

 

表紙へ  次へ