平成26年1月20日(月)  目次へ  前回に戻る

 

水寒風似刀。  水寒くして風は刀に似たり。 (王昌齢「塞下曲」一)

というぐらい今日も風が冷たかったですね。風のひとも毎日毎日ご苦労なことです。

・・・わたくしどもも毎日毎日ご苦労なことですが、更新します。

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むかしむかし、とあるところにとある国がありました。

国中一水、号曰狂泉。国人飲此水、無不狂。

国中に一水ありて、号して「狂泉」と曰う。国人この水を飲みて狂わざる無し。

この国には水源が一つあり、「き○がい泉」と呼ばれていた。この国のひとたちはみなこの水源からの水を飲んでいたので、気の○っていない人はいなかった。

ただひとり、王さまだけが、別に井戸を掘ってそこから水を取っていたので、気が〇ってしまわずにすんでいたのである。

そうすると、国民たちは

反謂国主之不狂為狂。

反って国主の狂わざるを謂いて「狂えり」と為す。

反対に、王さまが気が〇ってないのを指して、「王さまは気が〇っている」と言いだした。

于是聚謀、共執国主、療其狂疾。火艾針薬、莫不畢具。

ここにおいて聚まりて謀ごとし、共に国主を執らえて、その「狂疾」を療せんとす。火艾・針・薬、畢具せざるなし。

ついに国民たちは集まって互いに謀議し、みなで王さまを監禁して、気の○っているのを治してやることにした。お灸やハリや薬、あらゆる治療が試されたのである。

熱かったり痛かったりおなかを壊したり、たいへんつらい治療であった。

国主不任其苦、于是到泉所、酌水飲之。飲畢便狂。

国主その苦に任ぜず、ここにおいて泉所に到りて水を酌みてこれを飲む。飲みおわりてすなわち狂えり。

王さまはあまりの苦しさに耐えきれず、とうとう例の泉にまで行って、(覚悟を決めて)その水を汲み、飲んだ。

飲み終わると、立派に気が○ってしまったのであった。

「わーい、王さまがまともになられた」

「ばんざい、ばんざい」

君臣大小、其狂若一。衆乃歓然。

君臣大小、その狂、一のごとし。衆すなわち歓然たり。

王さまも臣下も身分の高いのも低いのも、その気の○ったこと一様になり、みな大いに歓んだ。

かくて国を挙げて祝うこと三月に及んだという。

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「宋書」袁粲伝に引かれる寓話です。

いやー、いい話だなあ。何度読んでもほれぼれするほどカンペキに、「社会」というものの持つ特性を描写しているではありませんか。すばらしい。

ところが、わたくしども肝冷斎一族が毎日毎日こんないいお話を紹介しているのに、なかなかみなさん「社会」というものを理解しようとしないので、わたくしどもも困ってしまっておりますよ。みなさん、どのように治療しても治らないなー。わたくしどもと同じ水を飲めばいいのに。わはは。

今日、このHPの読者、というひとに出会って驚いたが、肝冷斎の正体をどこまで知っているのか。肝冷斎は何人もいる、ということがわかっているのであろうか。

 

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