平成25年12月30日(月)  目次へ  前回に戻る

 

肝冷斎は南海の孤島から帰ってきませんので、今年最後の更新は拘泥斎が行います。

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宋のころのこと。

画師の劉侗徹は龍の画を得意としていた。

一日、有夫婦二人造門観画。

一日、夫婦二人有りて門に造(いた)りて画を観る。

ある日、夫婦であろう二人連れの男女が、劉家の門を叩き、描いた龍の画を見せてほしいという。

劉は正堂の机に紙を拡げて、ちょうど新作を描いていたところである。

「ご覧なさるがよい」

と、自信の作などを並べて見せてやる。

しばらく黙って二人で見ていたが、やがて男の方が劉に向かって言った。

龍有雄雌、其状不同。

龍に雌雄有りて、その状同じからず。

「龍にはオスとメスがあって、そのすがたは同じではないのですがねえ・・・」

「へー」

劉は相手にしなかったが、男は続けた。

雄者角浪凹峭、目深鼻豁。鬐尖鱗密。上汰下殺、朱火YY。

雄なるものは角の浪・凹峭(けわ)しく、目深く鼻豁(ひろ)く、鬐(キ)尖り鱗密なり。上は汰にして下は殺(さい)、朱火のYYたるあり。

「オスの方は、角のでっぱりと引っ込んでいる部分がはっきりしていて、眼窩は深く鼻は広くひろがり、タテガミは尖っていてウロコは密です。上半身は太っていて、下に行くほど細くなる。そして、赤い炎に照らされるように光を持つもの」

「ほほう」

続いて女房の方が言いだした。

雌者角靡浪平、目肆鼻直、鬐円鱗薄。尾汰于腹。

雌なるものは角靡きて浪平らか、目は肆(おお)きく鼻は直ぐ、鬐は円く鱗薄し。尾は腹より汰なり。

「メスの方は、角は後ろになびきでっぱりは無く、目は大きくて鼻はまっすぐ、タテガミは丸みがあってウロコの密度は薄いのです。尻尾は腹部より太いのよ。

・・・だから、あなた、そこは、もっと丸くしなくっちゃ」

劉に今描いている画についても、指導しはじめたのである。

「きみら・・・」

劉不能平、作色問何以明之。

劉は平らぐあたわず、色を作して「何を以てこれを明らかするか」と問う。

劉はついにあたまに来て、

「何でそんなことがわかるのか!」

と怒鳴った。

すると、二人は

身乃龍也。

身、すなわち龍なり。

「わたしどもは、龍なので」

と答え、

ぼわわ〜ん!

遂化作雙龍而去。

遂に化して雙龍と作(な)りて去る。

とうとう二匹の龍に変化して、空に昇って行った。

その姿をつらつら見るに、二人の指摘したとおりであった。

以後、劉の描く龍は、「真に迫る」と評されるに至った。

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宋・張君房「乗異記」より。

目の前に見える「現状」が真実ではないのである。みなさん、このわたしさえ本当は龍かも知れませんよ。来年は「ぼわわ〜ん」と龍に変じて空に昇って行くかも。あるいは、日本国は本当は龍だから、来年は株価もさらに上がって、みんなウハウハ状態になるかも。あるいはH島C−プがついに・・・。

・・・よいお年を、と申し上げるほどの度量はございませぬが、どうぞみなさま、よい初夢を。

 

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