―――アテナイのアンティステネスというひとはソクラテスの弟子の一人で、犬儒派の祖ともいわれる人である。
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あるとき、兄弟弟子のプラトンが病気で臥しているのを見舞ったことがあった。
プラトンはそのとき嘔吐がひどく、盥(たらい)に腹中のものをすべて吐きだしてしまっていたが、アンティステネスはその盥を覗き込んで、
「ああ、プラトン、君の病気は少しもよくなっていないねえ」
と嘆じた。
「どうしてわかるのだね?」
「だって、この盥には胃液は吐き出されているが、まだ「自惚れ」が吐き出されていないからね」
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アンティステネスはつねづねこう言っていたそうだ。
「ぼくは追従者の手に落ちるぐらいなら、鴉の群れに身を投じてついばまれた方がましだね」
ある人が
「どういうことかね」
「鴉の方はぼくの亡骸を餌食にするだけだが、追従者の方は生きているぼくを食いものにするのだからさ」
ちなみに「追従者」も「カラス」もアテナイでは「コラクス」と言ったのだそうである。
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樽の中の賢者ディオゲネスがアンティステネスの弟子にあたるそうです。「ギリシア哲学者列伝」巻六第一より。
うっしっし。やっぱり欧米のお話はオモシロいなあ。おいらもいつかは欧米になって回りのやつらを「あ」と言わせてやりたいものだ。おいらは毎日漢字を読んでいるだけのお人好しでは終わるつもりは無いのだぜ。