←おもろちゃん。「おれづむがたちよれば(中略)おなりがみてづりよら大きみにまはえ(後略)」と謳っております。大意は「初夏になった(ので我が村の神あしゃげで)姉妹神が手をすって祈り、大いなる女神さまに南の風が吹くことを(祈ってくれている。さあ、船出のときだぜ)」(おもろ925)
まだまだ平日は続く。なにか勇気の湧くような話を・・・。
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唐の皇族、定公・李宏は玄宗皇帝の甥っ子に当たる人であるが、
身長八尺。
身長八尺なり。
身の丈、2メートルをはるかに越える大丈夫であった。
唐の時代の一尺は31センチ強、とされていますので、たいへんな大男である。
しかもその勇武たるや、多くの人の貴ぶところであった。
あるとき、ほろ酔い加減で
遇虎搏之路。
虎に遇い、これを路に搏(う)つ。
路上でトラと遭遇し、これをぶん殴った。
すると、トラは気を失って倒れた。
そこで、李宏は、
「これはよい」
とトラの尻尾を枕に眠ってしまったのであった。
さて、宏の下僕が、宏の戻りが遅いので馬を牽いて迎えに出てきた。
そこで下僕は見たのである。
宏が地面に横になっており、
虎坐其上。
虎、その上に坐す。
トラが宏の長大なからだの上に座っているのを。
実はトラは気を取り戻したものの、李宏が枕にしている尻尾を抜き取ると彼が起き出してくるのではないかと恐れて、身動きができないでいたのである。
しかし下僕は李宏が倒されたものと思って、
「おお、だんなさま、どうしたことじゃ」
と嘆いた。
そこでトラと目が合いました。
「む」
トラはこちらをぎらぎら睨んでくる。今にもとびかかって来そうである。
「むむむ」
下僕は馬に飛び乗ると
走馬傍辺。
馬を傍辺に走らす。
トラのかたわらを馬で走り抜けようとした。
ウオオオオン!
虎跳攫奴後鞍。
虎跳びて奴の後鞍を攫(つか)む。
トラは飛び上がり、下僕のまたがっている鞍の後ろに飛びついた!
「うひゃあ!」
と、そのとき、枕を失った李宏は頭を打って起き出し、
「おとなしく枕になっておれ」
と言いながら
引弓射之而斃。
弓を引きてこれを射て斃す。
弓をきゅううと引き絞り、はっしとばかりにトラを射て、殺してしまった。
下僕、引き返して来て曰く、
「おお、だんなさま、ご無事でしたか」
「わしが無事でないことがあろうか」
宏及奴一無所傷。
宏及び奴、一も傷つくるところ無し。
宏と下僕、どちらも少しのケガもしとらなんだそうだ。
考えてみるに、トラは馬にしがみつけば宏が目を覚ますまでにその場から逃げ出せる、と思って下僕の鞍に飛びついたのだったかも知れない。
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唐・張鶩「朝野僉載」より。こんな能力のある人がいたかと思うと勇気が湧いてまいりますね。まいりませんか?
トラの方は災難ですが、馬も困ったかも知れん。なんにせよわしも強い力で、こんなふうに英雄的にすっきりとヤリたいものだ。(「しごと」ではなく「やつ」をヤってしまいそうですが・・・)