生魚(回転すし)食ってきた。生ものでハラいっぱいである。
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明の萬暦十六年(1588)のこと、呉江の書生・馮涵は米を船に載せて、長江の流れを遡って蘇州の山塘に向かっていた。
馮涵は読書人の家に生まれていたが、科挙試験の道を諦めて、一介の書生のままで商売に携わっていたのである。
夜、船がようやく蘇州城内に入ったころ、突然、袖の中が普段よりずっと重くなった。
「なにか入ったのかな?」
摸之。
これを摸(さぐ)る。
袖の中を探ってみた。
たしかに、何か入っている。
「なんだろう」
と取り出してみた。
「あ?」
得生人掌。鮮白帯血暖気猶蒸。
生人掌を得たり。鮮白にして血を帯び、暖気なお蒸すがごとし。
ナマのニンゲンの手が出てきたのであった。色はあざやかな白さ、傷口からは血が流れており、まだぬくもりがあって湿っていた。
「うわあ!」
怖恐不知所出、倉忙解纜。
怖恐出だすところを知らず、倉忙として解纜す。
あまりにもびっくりして、大混乱し、とにかく大慌てで船を進めさせた。
しばらく行ったところで馮涵はふところにあった「手」を水中に棄てようとして、
見水面有大白魚、躍入舟。
水面を見るに大白魚有りて、舟に躍り入る。
水面を見たところ、大きな白い魚がゆらゆらと泳いでいる、と見えて、それが舟の上に躍りあがってきた。
「なんだ?」
視乃一生人体也。鮮血淋漓而無手足。
視るに、すなわち一の生人体なり。鮮血淋漓として手足無し。
よくよく見ると、それは―――ナマのニンゲンの胴体であった。傷口から赤い血が流れているが、手足(や頭)は無い。
「うわーーー!」
馮、以此発悸病狂。
馮、ここを以て悸を発し、狂を病めり。
馮はこのために大いに驚き、発狂してしまった。
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ああ、コワかった。胴体とか刺身するとどれぐらいの・・・いや、今日食べたのがそんなのではありませんように。明・銭希言の奇譚随筆「獪園」より(明・徐応秋「玉芝堂談薈」巻十三所収)。