平成25年5月14日(火)  目次へ  前回に戻る

 

じゃいあんが釜のふたを開けた。釜の中ではお湯がぐらぐらと沸き立っている。じゃいあんはおいらに向かって、そこに入れ、とアゴをしゃくったのだった・・・。

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晋の時代のことでございます。お坊さんがおりましたのじゃ。

このお坊さんが亡くなった。すると、

所乗驢上山、失之。

乗ずるところの驢、山に上り、これを失う。

お坊さんが乗っていたロバが山の中に入って行き、行方知れずになってしまったのですじゃ。

それから何年かの月日が過ぎました。

時有人見者、乃金驢矣。

時に人の見る有るものは、すなわち金驢なり。

この山に入る者が、ときおり黄金色のロバを見ることがあった。

また、

樵者往往聴其鳴響。

樵者往々にしてその鳴響を聴く。

木こりたちは、(目にしないまでも)よくその鳴き声を聴いたものである。

山中の地方でございますから、六朝時代の政変の影響もあんまりない。

土地のひとびとの歌いて曰く、

金驢一鳴、天下太平。

金驢一鳴して天下太平なり。

―――黄金のロバが嘶(いな)なけば、この世はまことに平和なり。

と。

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唐・段成式「酉陽雑俎」より(「太平廣記」巻436所収)。

明日、釜の中に入ります。釜の底から宝物を採って来ないといけない。採ってきたらじゃいあんのもの。採ってこれなかったらまた怒られるぞー!

じゃいあんは問題ですが、天下自体は太平だから、まあいいか。去年までは国が亡ぶかどうか、という状態でしたからね。天下太平、五穀豊穣、豊年満作。間もなく安心して旅に出ようと思います。じゃいあんのいない国へ。

 

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