現在お東京におりましてございます。お東京の人の多いこと。毎度のことながら驚かされます。
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どうしてこんなに人が多いのか。
俗説、天地開闢未有人民、女媧搏黄土為人。
俗に説く、天地開闢していまだ人民あらざるのとき、女媧(じょか)黄土を搏して人と為す。
一般に申すには、天地が開かれたがまだ人間が存在しなかったとき、女媧(じょか)さまが黄色い土を丸めて、これに生命を与えて人間を作ったのだ、と。
女媧(じょか)は人面にして蛇身と伝わる創世の女神さまでございます。
天地はひろいので、この間に人間を満ち足らせるには、
劇務力不暇供。
劇しく務力して供うるに暇あらず。
たいへん忙しく働いてもきちんとしたものを作るには時間が足りないほどであった。
「やってられないわね・・・そうだ!」
女媧さまはいいことを考え着いたのであります。
乃引縄絙泥中挙以為人。
すなわち縄絙(じょうかん)を泥中に引き、挙げて以て人と為す。
つまり、縄を泥の中に引きずってから、これを持ち上げ、ぼたぼたと落ちた泥塊りに生命を与えて人間にしたのである。
これでたくさん人間が出来たのです。よかったでちゅねー。
しかし、こうして作られた人間のうち、
富貴者黄土人也。貧賤凡庸者絙人也。
富貴者は黄土人なり、貧賤凡庸者は絙人なり。
富みを持ち身分も高いのは最初に黄色い土を丸めて作られた人々であり、貧しい者・賤しい者・どうでもいいようなやつらたちは後で縄を引いて作った人である。
ということだそうですので、東京の地下鉄なんかに揺られている多数の人々の、ほとんどは実は縄からぽたぽた落ちた塊りの方か、と思うとなんか悲しいではありませんか。
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後漢・応劭の「風俗通(義)」より。
ちなみにこの女媧さまの手抜き人間製作の故事が、いわゆる「泥縄式」の語源となった・・・のではありません。
「泥縄」は「手抜き」ではなく「無計画」です。
どろなは(泥縄) 盗賊(どろばう)を捕へて縄を綯(な)ふと云ふ諺を、約(つづ)めたる語。事に臨みて、俄に準備することに云ふ。(「大言海」)
でございますので念のため。
ところで、「どろばう」と「どろぼう」の違い御存知ですか。むふふ。どうしても、とおっしゃるなら教えてあげないことも無い、んだけれどなー。
今日は岡本全勝さんをはじめ昔お世話になった方々に多くお会いした。みなさまは丸めて作ってもらった方の人・・・だといいですね。みんながんばりましょう。昼メシと晩メシのスシおいしうございました。串揚げおいしうございました。稲庭うどんおいしうございました。