東京寒い。はやく沖縄に帰りたいが、しごともうまく行かなかったので沖縄にも帰れません。しようがないので今日は妙齢の女性方ともつ鍋食った。
身の振り方は明日考えるとして、今晩のところは「山陽文稿」でも読んで寝ますわ。
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爪牙之者、不羽翼之、羽翼之者、不爪牙之、造物之術乎。抑保物之仁也。
これを爪牙とする者はこれを羽翼とせず、これを羽翼とする者はこれを爪牙とせざるは造物の術か。そもそも物を保つの仁なり。
爪とか牙を持つものは羽翼を持たない。羽翼を持つものは爪や牙を持たない。これが生物の在り方のルールであり、それによって生物はそれぞれ生きる場所を得ることができているのである。
これをニンゲン社会において考えてみるに、
厚之者不重之、重之者不厚之。
これを厚くする者はこれを重んぜず、これを重んずる者はこれを厚くせず。
大きな俸禄を与える者には重要な権限は与えてはならず、重要な権限を与える者には大きな俸禄を与えではならない。
ということであろう。
俸禄も権限も大きいのは君主のみでよい。そうでなければ臣下を操ることができぬ。臣下が俸禄も権限も持ってしまったら、君主を無視するであろう。君主が無視されてしまうようなを状態になったら秩序が崩壊するので、君主から俸禄と権限を受け取っている臣下も崩壊してしまうことになるのである。
鎌倉也、室町也、業已厚之、又従重之。如仁之也。
鎌倉や、室町や、業已みてこれを厚くし、また従いてこれを重んず。これを仁とするが如し。
鎌倉の源氏、室町の足利氏、いずれも天下を取ると、おのれの臣下の北条氏や細川氏に厚い俸禄を与え、さらにこれに大きな権限を与えた。恩愛を施して忠順ならしめようとしたのである。
ところが、臣下を操ろうとすれば臣下が君主をコントロールしはじめ、攻撃をはじめ、ついには滅ぼして自らが舞い上がろうと画策しはじめやがったのだ。
終不能保之、併爪牙羽翼而授之也。
ついにこれを保つあたわざるは、爪牙・羽翼を併せてこれを授くがゆえなり。
最終的に君主が亡びてしまったのは、爪牙と羽翼をともに一人の臣下に与えてしまったからであるのじゃ。
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なので、しごとをしないほうが給料がもらえるということになるのであろう。
頼山陽「爪翼説」(三好之直評点「山陽文稿」(明治11年版)巻下より)。
小品佳境(短いが内容はすばらしい)
と評される作品です。百回ぐらい読んで玩味してみよう。とりあえずあんまりおもしろくない気がしますが、百回読むとおもしろくなるかも知れませんのじゃ。