今日は頭痛激しく休んだ。会社には別のが行った。あまり動かなかったはず。
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はいさーい。さて、近世・沖縄。
少年之士、偶過蓑翁茅廬。
少年の士、たまたま蓑翁の茅廬を過(よ)ぎる。
まだ少年の士族(さむれー)が、みのかぶりのじじいの茅葺の家の前を通り過ぎたことがあった。
「少年の士族」は、以下「琉球童子」と言い換えます。悪しからず。
翁烹茶共語。
翁、茶を烹てともに語る。
じじいは、「ちょっと待ちなされ」と琉球童子を呼び止め、お茶を沸かし、いささかの会話をした。
「おまえさんは見どころがありそうな気もするが、無い可能性も高い。毎日どのようなことを日課にしておるのかな?」
琉球童子は言いました。
吾有利剣一口、吾祖求之世伝至今。吾日拭一拭、未敢些怠。
吾に利剣一口あり、吾が祖これを求め、世々に伝えて今に至る。吾、日に拭うに一拭いし、いまだあえていささかも怠らざるなり。
「おいらには、ぎとぎとに斬れる剣が一振りあるんです。おいらの御先祖さまがどこかで手に入れて、代々伝えておいらに至ったもの。おいら、毎日毎日これを一回はきれいにして、ぎとぎとにしています。いまだ一日もさぼったことはありません」
―――利権が御先祖さまから伝わっていたらよかったのですが、「利剣」か。
「ほう」
じじいは一応相槌を打ったが、すぐにまた訊ねた。
「ほかに宝物は伝えられておらぬのかな?」
琉球童子曰く、
没有。
有るなし。
「ないのさー」
じじい、曰く、
此剣小宝也、世伝之宝唯汝之身也。何不日拭其身。
この剣は小宝なり、世々に伝わるの宝はただ汝の身のみなり。何ぞ日としてその身を拭わざらん。
「その剣はちっぽけな宝ものじゃ。代々伝わってきたまことの宝は、おまえさんのその心身そのものじゃぞ。なのに、どうしておまえさんは、(剣ばかり拭ってぴかぴかに磨いて)おまえさん自身を拭おうとしないのじゃな?」
「ええー!」
琉球童子はしばらく考え込んでいましたが、やがてじじいに礼拝し、その教えに感謝した。
―――琉球童子はそれまではあんまりお風呂に入らなかったのかな?
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「蓑翁片言」より。
「・・・これが、おいらがみのかぶりのじじいを師と仰ぐわけなのさ」
と琉球童子はにやにやと言いました。
若いうちに「おまえは大切なひとである」と言われたら、誰でもうれしくて仕方ないでしょうね。
「ふむ・・・」
肝冷斎はやんばるがえりの日焼けした顏で、首をひねった。
「みのかぶりのじじい、なかなか食えぬやつよな。いよいよわしが直接出向いて確かめてみるか・・・」