平成23年12月12日(月)  目次へ  前回に戻る

 

今日もなんだかふわふわしていましたが、何となく「こちら側」に戻ってきた感じがします。

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先週やっていたことも少し思い出した。

このお話が途中になっていましたね。12月8日に続けて「祭鰐魚文」を読みます。

刺史の韓退之が読み上げていう、・・・・・

・・・・よいか。今は唐の世の中になったのだ。

唐の天子は、

神聖慈武、四海之外、六合之内、皆撫而有之。

神聖にして慈武、四海の外、六合の内、皆撫してこれを有(たも)つ。

神聖にして慈しみ深く、かつ武威あらかたであられる。四方の海の向こうの世界の果てまで、東西南北・上下の宇宙の内部のすべてのものを優しく愛撫されるように支配しておられるのである。

もちろん、古代の聖天子・禹が整えた九州(伝統的な漢族の住居地)のうちであり、揚州に近く、(蛮族の官ではなく、天子が中央から差し遣わす)刺史や県令が治める地であればなおさらのことである。

そのような地であるこの潮州に、鰐魚がいるのはどういうことか。

鰐魚其不可与刺史雑処此土也。

鰐魚はそれ、刺史とともにはこの土に雑処すべからざるなり。

ワニよ、おまえは、わしのような刺史さまと、同じ土地にいてはいかんのである。

刺史は、天子の命を受けて、この領域を守り、人民を治めるものなのだ。しかるに、鰐魚よ、おまえはなにものか。

不安溪潭、据処食民畜、熊、豕、鹿、獐、以肥其身、以種其子孫。

溪潭に安んぜず、据処に民畜、熊、豕、鹿、獐を食らいて、以てその身を肥やし、以てその子孫を種(う)う。

この淵に安らかに暮らしているのではなく、あちらこちらで人民、家畜、熊、いのしし、シカ、ノロの類を食うて自分の体を太らせているではないか。自分の子孫を殖やしているではないか。

おまえは、刺史に争いを挑む者である。

刺史はどんなにオロカで弱くても、つまりはわしのようであっても、どうしておまえのような鰐魚に頭を下げ、腰を低くして接しなければならんことがあろうか。そんなことをして人民や官吏の笑いものとなってまで生きていくはずがないではないか。天子の命を受けてこの地に来た者として、おまえにおまえの為すべきことをきちんと理解させねばならぬのだ。

おお。鰐魚よ。

おまえに認識力があり、音を聞く能力があるのなら、わしの言葉を聴け。

この潮州の南には大いなる海(南シナ海)がある。そこでは巨大なクジラや鳥、小さなエビやカニが自分たちの生命を全うするためにお互いに食べたり食べられたりしているのだ。

鰐魚朝発而夕至矣。

鰐魚、朝に発すれば夕べには至らん。

ワニよ、おまえは、朝この淵を出れば、夜にはあの海に到達することができるだろう。

おまえは、こんな淵で、ハラを減らして人民や家畜を食うのでなく、あの海に行き、そこで壮大な食物連鎖の一環となって生きていくがよかろう。

これがわしのおまえへの最後の通告じゃ。

今与鰐魚約、尽三日、其率醜類南徙于海、以避天子之命吏。

今、鰐魚と約す。三日を尽くして、それ、醜類を率いて南のかた海に徙り、以て天子の命吏を避けよ。

いま、ワニよ、約束しようではないか。三日のうちにおまえの悪い仲間たちを連れて南の海に移り住み、天子の命じられた官吏であるわしを避けるがよい。

三日不能、至五日、五日不能、至七日、七日不能、是終不肯徙也。

三日あたわざれば五日に至り、五日あたわざれば七日に至り、七日あたわざれば、これ、ついに徙るをがえんぜざるなり。

三日のうち・・・では無理かな? そうしたら五日のうちに移るのだ。五日でも無理かな? そうしたら七日のうちに移り住むのだ。七日たっても移りすまなければ、そのときはわしの通告を否定した、ということになるのだぞ。

そうなれば、おまえは天子の命じた官吏の命令さえ聞かない

冥頑不霊、不聞不知也。

冥頑にして不霊、聞こえず知らざるなり。

おろかでかたくなで智慧がなく、ひとの言葉を聞くこともできず認識することもできないモノ、ということになるのだ。

冥頑不霊而為民物害者、皆可殺。

冥頑にして不霊、しかも民物の害を為すものは、みな殺して可なり。

おろかでかたくなで智慧がなく、しかも人民やドウブツに害悪を為すやつについては、どんなやつでも殺していいと決まっておる。

すなわち刺史であるわしは、部下や人民の中から優秀なやつを選びだし、かれらに強弓と毒矢をあずけて、鰐魚を追跡させ、

必尽殺乃止。

必ずことごとく殺してすなわち止まん。

おまえらをことごとくコロしてから、やっと作業を止めさせるであろう。

其無悔。

それ、悔いる無かれ。

そのときになって後悔するでないぞ!

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韓退之らしい屈折してるんだかマジメなんだかわからない論理構成で、なんだかおもしろいですね。三日、と限りながらだんだん伸びて七日までOKになったり、最後に突然捨て台詞を吐いて居丈高になったり、唐代屈指の名文といわれるのもムべなるかな。

また、この文を「古文辞類纂」に入れた惜抱軒先生・姚鼐

韓退之鰐魚文、檄令類也。

韓退之「鰐魚文」は檄令の類なり。

韓退之の「鰐魚の文」は鰐魚に語りかけているのであるが、目下の者に呼びかけ、一定の行動を起こさせようとしている点で「檄文」と同類である。

としてこの文を「檄」に分類しているのもたいへん適切なことだというべきであろう。

中国海軍もワニのように南シナ海で覇権争っててくだちゃい、東シナ海に来るな・・・と国家エゴむき出しの減らず口を叩いていたらまた頭痛くなってきた。ベトナムさま、フィリピンさま、ごめんなさい・・・

 

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