本日は台風でした。猫町にも行けず。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
鄭彦訥は儒学の経典と東洋の歴史に通じたすぐれた士であったが、あわれ両班の家に生まれながら科挙に及第しなかった。
ために落魄して、いわゆる倭乱(朝鮮の役)の後、窮迫して
丐食都下。
都下に丐食す。
京城城内で乞食をして暮らしていた。
わずかに得た銭貨も酒に替えてしまうらしく、ある時、城内で見かけて
「一蚩(いっし)よ、待て、おまえと語りたいことがある」
とその号を以て呼びかけたが、髪とひげぼうぼうの垢汚れて黒い顔をこちらに向け、
飲中千日少、 飲中の千日は少にして、
乱後一身多。 乱後の一身は多し。
酒に酔うて暮らしていれば、千日だってあっという間じゃ。
戦乱の後の閉塞した社会では、たった一つの体さえ、養うには多すぎると感じるが。
と吟じて、そのまま貧民窟に消えて行った。
それがわしの彼を見た最後である。
またある友人が声をかけたときには、
怪石夜能虎、 怪石は夜 よく虎となり、
孤松秋欲弦。 孤松は秋 弦たらんと欲す。
不思議な形の石は深夜にトラに化けるんだ。
ただ一本の松の木は秋の風に吹かれて弓づるのようにひね曲がっていく。
と答えたという。
其寒苦如此。
その寒苦かくの如し。
その貧しく苦しい生活がよく表れているではないか。
・・・・・・・・・・・・・・・・
おそらく、「石」も「松」も自分の比喩であろう。夜にしかトラにはなれず、貧しさと鬱屈の中で、どんどんひね曲がっていく自分の。
李朝の李晬光「芝峰類説」より。台風一過、今夜あたりからそろそろ本格的に秋です。さあ、この秋はわしもどんどんひね曲がるぞ〜。