平成23年9月12日(月)  目次へ  前回に戻る

 

今日も暑かった。明日も暑いらしい。ばてた。空には中秋の名月ですなあ。

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王琢崖先生(←実はどんなひとかよく知りません)がいいますには、

「古楽府」(古代の宮廷歌謡)に「前有樽酒行」(前に樽酒あるの行(うた))という曲がある。「觴酌十曲」の一である。

これに傅玄や張正といった六朝時代の詩人が詩を付けているが、

皆言置酒以祝賓主長寿之意。

皆、酒を置いて以て賓主の長寿を祝うの意を言う。

いずれも、酒杯をあげながら、お客や主人の長寿をお祝いする趣旨の歌である。

ところが、

太白則変。

太白すなわち変ず。

李太白がそれを変えてしまったのじゃ。

というのである。

李太白が何をどう変えてしまったのだろうか。

気になってきませんか?

・・・なりませんか、そうですか。

わたしは少しだけ気になりましたので、李太白「前有樽酒行」(前に樽酒あるの行(うた))を読んでみた。

第一歌

春風東来忽相過、  春風東より来たってたちまちに相過ぎ、

金樽淥酒生微波。  金樽の淥酒(ろく・しゅ)は微波を生ず。

落花紛紛稍覚多。  落花紛々としてやや多きを覚ゆ。

美人欲酔朱顔酡。  美人酔わんと欲して朱顔、酡(た)なり。

青軒桃李能幾何、  青軒 桃李 よくいくばくぞ、

流光欺人忽蹉跎。  流光ひとを欺きてたちまちにして蹉跎(さだ)たり。

君起舞。        君、起ちて舞え。

日西夕。        日は西に夕べなり。

当年意気不肯平、  当年の意気、平らぐをがえんぜざるも、

白髪如糸歎何益。  白髪糸の如くんば歎くも何の益かあらん。

ちなみに「淥」(ロク)は水の清いことをいい、「淥酒」とは今いう「清酒」のことである。

 春風が東から吹いて来て、あっという間に過ぎて行ったので、

 黄金の樽の中の澄み切った酒の表面に、かすかな波が起こったわい。

 落ちる花びら、散りまがうて少しばかり多すぎるような気がするぞ(もう春もたけなわなのじゃ)、

 美しいひとはお酒を飲んで、若やかなかんばせにほんのりとくれなゐの色さしぬ。

 青(←春の色である)く塗った軒端に桃の花・李の花咲けど、いつまでのことであろうか、

 流れる月日はひとをだしぬき、あっというまに足元はよろめく。

  おまえさま、立ち上がって踊りなされよ。

  太陽はもう西に傾きはじめたのだ。

 若いころの心意気、おさまって変にまるくなんかなっていないとがんばってみても

 糸のような白髪になってしまってから後悔したって何にもならないのだから。

なんとなくわかってまいりました。「祝い」の歌で「歎くも何の益かあらん」なんていいません。「第二歌」を見てみよう。そうすればもっとはっきりするのではないか。

しかし「第二歌」を読もうとして、もう目がしょぼしょぼで漢字が読めない。当年の意気が平らかになってまいりました。「ああ」と歎いてしまいます。歎くと何かいいことあるかな?

続きは明日にいたします。

 

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