「人体の不思議展」がようやく問題になってきているようですね。(←何が問題になっているのか知りたいひとは「人体の不思議展」でググってみよう。)
さて。「人体の不思議展」と聞くと食欲が湧いてくるひともいるかも知れませんので、いくつかシナの美味いものを紹介してみましょう。今日は第一回で「湯驢」という食べ物です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「湯驢」(とうろ)はかつて陝西において
作方物、遠貽餽人者。
方物と作し、遠く人に貽餽(おく)る。
名物として、遠方のひとに贈ったものだ。
そうである。
味は
最佳美
というのだから、特上品だったのでしょう。
では「湯驢」(ロバの湯どおし)という名前のこの食べ物、どうやって作ったのであろうか。
先以厚板鋪地高。
まず厚板を以て地に高く鋪(し)く。
@
まず、分厚い板を地面に敷き詰める。
この板は、あちこちを釘を打って補強し、割れたり壊れたりしないようにしておく。
次に、その板に
鑿四眼。
四眼を鑿(うが)つ。
A 四つの孔を開ける。
続きまして、
拉驢上板、納四蹄於眼中。
驢を拉して板に上げ、四蹄を眼中に納む。
B ロバを引っ張ってきて板の上に昇らせ、四本の足のヒヅメをAの四つの孔に入れる。
この際、ヒヅメが孔から抜けないようにきっちりと入れることが大切である。
あとはもう簡単でございます。
以多沸熱湯澆ぐ。自頭至尾遍体淋漓、以毛尽脱為度。
多沸熱湯を以てこれに澆ぐ。頭より尾に至るまで遍体淋漓として、毛を尽く脱するを以て度と為す。
C
大量の沸騰した熱湯をこのロバに注ぐのである。頭から尻尾まで全身にたっぷりと、(熱のため)全身の毛がすべて抜け落ちてしまうまで注ぐこと。
これにて、雪のように白いロバ(「雪白驢」)の出来上がり〜。しかして、
命已絶、肉已熟。
命すでに絶し、肉すでに熟す。
ロバの命はこのときには尽きており、お肉の方は十分茹でられている。
という寸法さ。
この間、ロバの
慟楚為如何耶。
慟楚すること如何と為すか。
吼え、泣き、叫ぶこと、どれぐらいだと思いますか?
しかし四本の足が板に開けられた孔にはまりこんで身動きできないので、ロバはたいへん苦しみ、悶えながら命尽きていくのである。
その後、胴体を裂いて腸とその他の内臓を取り除け、
分割其肉、量大小成塊、懸之風処風乾。
その肉を分割し、大小を量りて塊と成し、これを風処に懸けて風乾す。
その肉を分割して、大小を勘案して肉塊にし、風通しのよいところに陰干しにして乾かすのである。
陝西ではたいへん貴重なものとされ、なまなかな宴席では用いることはなく、尊い方への贈り物にするのだ。
なお、肉のしまりが悪いときは、陰干しにした肉を両側から竹ベラで挟みこんで、人通りの多いところに埋めておく。
任車馬往来践踏。
車馬の往来して践踏(ふ)むに任す。
車や馬やひとびとが行き来して、それを踏みつけるままにするのだ。
一二年でも三四年でもこのようにしてから掘り出して、収蔵しておくのである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
清・劉玉衡「在園雑志」巻四より。
ロバだから「馬では無いけど美味(ウマ)そう」ではありませんか。わはははー。