わーい、またPCが動いた動いた。
今日は休日ですがインフルっぽくて、表に出る気がせぬ。よって、昼間から「不倫」のお話をします。
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唐のころのことなのだそうでございますが、陝西・華山のふもとにある華陰の県令・王真の妻趙氏はもと燕(北京あたり)の富豪の娘で、王が一目ぼれして妻にしたという女であったが、この半年ほど様子がおかしい。
王との会話など上の空のようであり、夜のいとなみへの誘いにも答えようとせぬ。
ある日、王が用あって昼間のうちに外出先から家に戻ったところ―――
見少年与趙氏同席飲酌、歓笑甚。
少年と趙氏、同席飲酌して歓笑甚だしきを見る。
若い男と妻の趙氏が、同じベッドに座って飲み食いし、うれしそうに笑っているのを見てしまったのである。
王は
大驚訝。
大いに驚き訝(いぶか)れり。
たいへん驚き、どういうことであろうかと疑うた。
「ど、どういうことだ」
と不意に部屋に入ると、
趙氏不覚自倒気絶、其少年化一大蛇、奔突而去。
趙氏、覚えず自ら倒れ気絶し、その少年化して一大蛇となり、奔突して去れり。
妻の趙氏は動顛したか、気を失って倒れてしまい、若い男の方は一瞬のうちに巨大なヘビに変じて、すばやく逃げ去ってしまった。
「おろちか!」
王はヘビの行方も気になったが、まずは倒れた妻のところに駆け寄り、
「おい、大丈夫か」
と助け起こした―――直後、
「ぎゃ!」
と王は飛びのいた。
俄而趙氏亦化一蛇奔突倶去。
にわかにして趙氏、また一蛇と化して、奔突してともに去る。
王の腕の中で、趙氏は突然にまたヘビに変じたのだ。ヘビは王をじろりとまばたきせぬ目で見つめると、すぐに向きをかえてすばやく逃げ去り、前のヘビの後を追った。
王は二匹の後を追うたが、
倶入華山、久之不見。
ともに華山に入り、これを久しくして見えず。
二匹で聖なる山である華山に入っていき、やがて見失ってしまった。
王は仕方なく、妻の実家に妻が病死したように伝えたが、一月ほどして使いの者が帰ってきて言うには、すでに趙家は跡形もなかったとのことであった。
いつから趙氏が「ヘビ」であったのか。最初からヘビであったのか、若い男と情交するうちにヘビとなったのか、最後に精神が動顛してヘビと化したものか。まことに不思議なことである。
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唐・李隠「瀟湘録」より。
王がコロしちゃったのを誤魔化しているだけでは・・・・というような、ヘタな穿鑿は止めておき、これはメリジューヌ型説話の変形である、と考えます。メリジューヌ型神話ならユング心理学の「元型」論で解くべきものである。されば、ヘビ男自体が妻の趙氏の「無意識」であり、それを喪失した瞬間に、趙氏自身が「無意識」下の存在と化したのだ、その趙氏そのものが王真の「無意識」のアニマでありなんたらかんたら・・・。ああありがたやなんまんだ。と考えたらわかった。さすが近代の西洋科学だ。ニンゲンの心までも解析することができるのだなあ。