平成22年11月25日(木) 目次へ 前回に戻る
この熱烈の声を聴け。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
熱心、国を愛するの、会民諸君に問はん。・・・
当国○○○の内政に干渉し、其の憲法を自由に制定改正するを、禁ぜしは何れの国なるや。(会民叫んで曰「●●●●なり、●●●●なり。」)
地中海に星羅せし当国○○○の属地を、悉皆棄捨せしめしは、何れの国なりや。(会民絶叫して曰「●●●●、●●●●なり。此恨み、忘る可らず。」と叫ぶ。)
当国に向かつて是等の侮辱を加へし者は、●●●●なり。然らば則ち、●●●●は○○○の、国讐にあらずや。
・・・今若し当国より、五千若くは、六千の兵を発して、我が疆上に臨ましめば、我が国の有志者、必ず義兵を挙げて、内より応ずる者あらん。斯の如くんば、大事立どころに、定まらん。今日弊邦(△△△)の存亡は、唯当国人民諸君の、意中に在るのみ。」
此時会民は皆な絶叫して「援(すく)ふ可し。」「助けずんば、あるべからず。」と喝采せり。
云々。
うむ。
よう言うた。
これは、スパルタに攻められて危急存亡の秋にあるテーベの志士・巴氏が、ペロポンネソス戦争で負けてスパルタとの屈辱講和のあとに生きるアテネの民会で、テーベ救済の兵を求めてアテネ民会で行った演説の一節である。○○○には「アゼン」(=アテネ)、●●●●には「スパルタ」、△△△には「セーベ」(=テーベ)が入ります。
巴氏はこのあとアテネの志士・阿慈頓の忠告を受けて行政官会議の実力者の李氏を訪ね、李氏に自らの策を告げて、李氏の口から行政官会議でテーベ恢復の議を提唱してもらうのであります。
この一節に対して、次の評がある。
鳴鶴曰、巴氏演説、字字熱血、阿人感動、於是乎巴氏心事漸将就緒。而由阿慈頓之忠告、生多少障碍、及李氏容仮兵策、議諸於朝、恢復之計殆成。而又一跌。変化百出、筆力縦横。
鳴鶴(@)曰く、巴氏(A)の演説、字々熱血、阿人感動し、ここにおいてか巴氏の心事ようやく緒に就かんとす。しかして阿慈頓(B)の忠告により、多少の障害を生ずるも、李氏(C)の兵を仮るの策を容れ、これを朝に議するに及びて、恢復の計ほとんど成る。而してまた一跌す。変化百出して、筆力縦横せり。
鳴鶴(@)が思うに、巴氏(A)の演説は一言一言が熱血のほとばしりであり、阿人(アテネびと)は感動した。これによって、巴氏の(自国恢復の)思いは、まず端緒につくことができた。そのあと、阿慈頓(B)の忠告に従って、多くの障碍はあったものの、李氏(C)に面会して彼にアテネ兵を借りる策を承認させ、その案を行政官会議に諮ってもらうことになって、恢復の計はほとんど成功したにみえる。ところがこのあとまた大変なことが・・・。それは次回のお楽しみとしまして、有為転変、事件次々におこって変化百出し、筆者の文章力は縦に横にほしいままにふるわれるのである。
なるほど。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
以上、矢野龍渓「経国美談」第六回より。
さて、問題です。
@〜Cのひとは、なんというひとでしょう。それぞれ次のア)〜エ)の中から選んでみてください。
@ 鳴鶴 ( )
ア) 藤田茂吉 イ)馬場辰猪 ウ)メルロー エ)わたなべつねお
A 巴氏 ( )
ア) ペロピダス イ) 三つ巴修羅太郎 ウ) 巴金 エ) ハリス
B 阿慈頓 ( )
ア) アリストジートン イ) 阿字観刃之輔 ウ) ニュートン エ) アランドロン
C 李氏 ( )
ア) リシス イ) 李恵践 ウ) 李香懶 エ) 李退傾