平成22年11月18日(木) 目次へ 前回に戻る
ああ。
何かを言おう、何かを言いたいのだ! とさっきまで思っていたが、何かを語ろうとしたら声しわがれかすれ、唇震えて何も言えない。
・・・というぐらいしごとやニンゲン関係に追い込まれているのだ。
ぎぎぎ。最後の力を振り絞って次のようなことを語る。
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伊勢の国、外宮権禰宜の度会(わたらい)の神主・盛広というひと、伊勢湾の対岸の三河から女を迎えて妻とした。
その女の侍女の中に、筑紫の国出身の女がいたのに盛広早くも目をつけて、隙あらばと狙っていたが、なかなか機会が無くて日々を過しておった。
ある時、思ひかねて、妻に向ひていひけるは、
「言うと問題はあるかも知れぬが、裏表無く言うぞ。おまえとわしの仲じゃから心おくこともあるまいと思うて言うのじゃぞ。
そのつくしの女、我にあはせ給へ。たへがたくゆかしき事侍り。
あの筑紫出身の女、わしにヤラせてくれんかのう。どうしてもがまんできないぐらい知りたいことがありましてなあ」
妻に向かって侍女とヤラせろと堂々と言うたのである。「侍り」と敬語を使っているのもなかなかあなどれない男だ。
これに対し、妻の答ふるやう、
「それほど美しい女でもございますまい。振舞いや動作がいろっぽいとも思えませぬが、
何事のゆかしくて、かくはのたまふぞ。
何がお知りになりたくて、そのようにおっしゃいますのやら」
盛広、ぽんと膝を打って、
「いまだしり給はぬか。
ご存知ではございませんでしたかな。
つびはつくしつびとて第一のものといふなり。さればゆかしくてかく申すぞ。
つびについては「筑紫のつび」と言い習わし、筑紫のものが我が国最高だと言う、だから、それを確かめたくてこう申しておるのじゃ」
つび、とは何でしょうか。
妻、ぽんと手のひらを打って
「世にやすきことなり。されど・・・。
わかりました、たやすいことでございますわ。けれど・・・」
「けれど?」
「のたまふ事まことならば、不定の事なり。
本当におっしゃるようにそのことを確認したい、ということでしたら、その言い習わしは間違いだ、と申し上げてよろしいわ」
「え?」
「だって、
まらはいせまらとて、最上の名をえたれども、御身のものは人しれずちひさくよわくてあるにかひなきものなり。つくしの女のものもさぞあらん。
まらについては「伊勢まら」と言い習わし、我が国最上といわれますのに、あなたのモノはほかのお方はお知りになるかどうか、小さく、弱く、あってもかいのないものですもの、筑紫女のモノもその程度でございますわよ」
むむむ・・・!
「おおっほっほっほっほほ。
このこと思ひとどまるべし。
筑紫女とヤルことは諦めることだわね」
むむうううう・・・・。
盛広口をとぢて、いふ事なかりけり。
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橘南袁「古今著聞集」巻十六・興言利口第二十五より。「古今著聞集」は実は少年時代からの愛読書なのである。
それにしてもオロカな話しですな。下品。かつ愚昧。くだらん。最低。○にたい。これが最期の更新となってしまうと恥ずかしいような気がしてきた。明日も何とか●き抜いて、明日も更新したいのだが、果たして如何・・・。