平成22年11月17日(水)  目次へ  前回に戻る

弱いのでこころの圧力かかるとすぐ苦しくなってくる。

「がんばれ! きみなら大丈夫だ! 期待している!」 と「上役」に言われたらどうしよう。

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というような精神状態なので、今日は短くやります。

唐のころ、

記事珠

という宝物があった。

手のひらに乗るほどの大きさの珠で、おそらくは南海の産であろうと思われるが、

紺色、有光。

紺色にして光有り。

紺色で、闇の中でも鈍く光る。

この珠、まことに不思議な力あり。

或有闕忘之事、則以手持弄此珠、便覚心神開悟、事無巨細、渙然明暁、一無所忘。

或いは闕忘のこと有れば、手を以てこの珠を弄するに、すなわち心神の開悟を覚え、事の巨細無く、渙然として明暁、一も忘るるところ無し。

時に何かを忘れたときには、このタマを手のひらに載せて転がせばよい。ただちに頭の中がすっきりして、物事の大小に関わらずはっきりと明確になり、すべてのことを思い出すことができるのだ。

このタマ、開元年中に宰相となった張説が手に入れたという。

張説は、このタマのおかげで、あらゆる事件の先例、経緯、あらゆる法令の条項、あらゆる人物の経歴、性向をいつも覚えていることができたので、ついに名宰相の名をほしいままにしたのであるという。

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「開元天宝遺事」巻上より。

もちろん、どのひとが自分の宴会に参加していたか、とか、年末年始に誰からどういう贈り物をもらったか、などもよく思いだすことができたのでしょうなあ。

近現代ニホンを代表する偉大なる常識人・山本夏彦先生のおことばに

・・・上役が引っ越しすると・・・たかが東京から大阪へ転勤するのに、東京駅まで見送らなくてもよかろうと私は思うが、いまだに見送っている会社がある。上役というものは、このとき来た社員と来なかった社員を、肝に銘じておぼえるものである。・・・それが出来るのが上役というものなのである。

とある。この「上役」の不思議な能力と、みごとに符合するのである。(「毒言独語」より。何度も同じことをおっしゃる方だからほかでもおっしゃっておられるかも知れぬが)

みなさんは肝に銘じておくべきであろう。

 

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